ベンチャー経営者のiPS細胞山中教授
日経トップリーダーの新春特別企画でトップに載っていたのがノーベル医学賞受賞の山中教授だったので最初は違和感を感じました。京都大学の教授でノーベル医学賞受賞の方ということで、私の勝手なイメージとしては著名学者を輩出している名門一族のエリートで順調に研究者としての道を上ってきた学者の方だと思ったからです。しかし、記事を読むと実家も小さなミシン部品工場で業績が悪化したこともあり決して裕福な家庭ではなかったようです。そして整形外科医で神戸大学医学部卒業後、指導医からは手術に時間がかかりすぎ「ジャマナカ」とあだ名をつけられ叱責される日々が続いたそうです(今でしたら完全なパワハラと思いますが)。米国でポスドク(博士研究員)として過ごし帰国したのち、日本の劣悪な研究環境に悩みながら研究場所を探して応募するもことごとく不採用でようやく奈良先端科学技術大学院大学で採用されるといった不遇の時代も長かったようです。
こういった順風満帆でないあたりが、現在京都大学iPS細胞研究所(CiRA:サイラ)の所長になって500人近くを率いるようになってからも生かされている気がします。研究所内の壁や仕切りを取り払い研究者どおしが自由に話せるオープンラボ方式を導入したり、自らフルマラソンを走ってクラウドファンディングで研究資金を集めるなどベンチャー的手法をとっています。そして知財管理などは日本の大学の弱い部分ではありますが専門家をスカウトし、特許紛争では米国企業とも渡り合うなど経営者としての手腕も発揮していることに驚きました。いわゆる純粋培養的でなく雑草的な研究者であるところが強みではないでしょうか?
日本の研究者の場合まだ主流はボス的な指導教授の影響下で着々とキャリアを積んでいく徒弟制の形のような気がしますが不思議とノーベル賞受賞の科学者でこのようなタイプの方はあまり見かけない気がします。ポスドク(博士研究員)過剰問題の一つとしてこのような主流を外れてしまうと研究どころか生活を維持するのも大変というところがあるようです。山中教授レベルでもポスト探しに苦労するというのはまだまだ徒弟制的なものが残っていることも一因ではないかと思われます。あまり具体的な提言はできないのですが、優秀で情熱のある研究員がきちんと研究できるような生態系を作ることは科学技術立国日本にとって今後一層大切かと思います。そして山中教授のような「雑草的研究者」がどんどん増えていけば大学発ベンチャーを生み出すうえでも大きな推進となると思われます。
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