GRIT(やり抜く力)は身につくか?
ベストセラーなので知っている方も多いかと思いますがアンジェラ・ダックワースの「GRITやり抜く力」を読みました。骨子としては社会において大切なのは才能よりもGRIT(やり抜く力)で自分自身で内側から伸ばす、また上司、教師、コーチやメンター的な人の力で外側から伸ばすことができるということではないかと思います。読後感としては気づきはあるがモヤモヤ感は強いところもあるといった感じでした。
半分程度はいかにGRIT(やり抜く力)- 長期的な目標にむけた情熱や粘り強さ -が人生の成功において大切かということが実証研究をもとに述べられたいます。この部分は確かに「たいして才能があるわけでもない自分にできるのだろうか?」と思っている方にとっては福音かもしれません。私もその部分は大いに勇気づけられました。しかし、モヤモヤ感の一番はこのGRIT(やり抜く力)は自分自身で内側から伸ばせるというロジックです。「ストレッチした目標をたててそれを達成する連取を繰りかえす」「興味をもったことことを掘り下げる」などが挙げられていますが、どうしても「そもそもそんなことができる人間はもともとGRIT(やり抜く力)が強いのではないの?」という考えが頭から抜けないからだと思います。
どちらかというと上司、教師、コーチやメンター的な役割の外側の立場の人間の役割については共感を覚えました。素晴らしい上司・教師との出会いは自分にとっても大切な要素を占めているからだと思います。振り返ると私は小学校3年生までは落ち着きのないいたずら好きな子で勉強もせいぜい中程度で平凡な子でした。しかし小学校4年生の担任の先生との出会いは転機ではないかと思います。その先生は週記(日記では大変なので週記にしたのでしょう)というものを推奨しました。最初は多少イヤイヤしかし、先生がコメントを丁寧に書いてくれたので面白くて4年生のころは完全に習慣になりました。文章を書く練習を繰り返ししたせいで国語の成績がよくなり、それにつられて他の教科もどんどん良くなり4年生の終わりには成績上位者になっていました。この先生のコメントもダメ出しではなく、直しも多少入るのですがたいてい前向きなコメントが入っているのでうれしくなったわけです。
ただ、一方で上司、教師、コーチやメンター的な役割の方には逆にひたすら無理な要求やダメだしに終始するタイプが多いのは残念なことです。最近話題になった例では「お前の残業の20時間は全く無駄だった」と語った電通の自殺した女性社員の上司などは典型的な例かと思います。むしろ、この本はこういった上司、教師、コーチやメンター的な役割の方にいかに人々の持って生まれた能力の芽をつぶさずに伸ばすかと言う観点で見ていただければよい本ではないでしょうか。
私も年齢的にどちからというと指導的立場に立つことが多いので気を付けなければならないと思います。私は週末地域でカブスカウト(小学校3~5年生)の指導責任者をしていますが、どの子供もキラリと光るものを持っています。不思議とあまり学校の勉強などに直接役立たなそうなことは多いのですが、指導としてはそのような原石をどんどん磨いていくような方向が推奨されています。多分一般的には親や大人がそのようなものをくだらないと決めつけて芽を摘んでいくことが多いので気を付けなくてはいけません。ボーイスカウト活動だとロープ結びやキャンプ活動など目先あまり役に立たなそうなことしかやりません。そういった意味で最近は他の習い事に押され気味ですが、目標を自分で立てて達成するといったスカウトの自律的な活動が基本で、GRIT(やり抜く力)を身に着けるような体験は多いと思います。その点ではこの活動の素晴らしさを見直しました。
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