マイルドヤンキーが怒れるヤンキーへーアメリカ大統領選挙についての雑感
基本的に政治は素人ですし、個人攻撃になりがちなのであまりブログで政治の話はしないのですが今回はあまりに驚いたので雑感を書いています。長年米国企業に勤務して、米国でも働いていて今もお客様でアメリカ企業を持っていますのでアメリカ人の友人・知人は多数います。一般の方はアメリカ人というと白人と黒人程度しか思い浮かばないかもしれませんが、中国系、アラブ系など様々ですし、白人といってもアングロサクソン、イタリア、スラブ系など様々です。
私の友人・知人のコメントはたいてい「クリントンはあまり好きではないがトランプよりははるかにましだ」で、今回の感想としては「nightmare(悪夢だ)」「カナダに移住してやる」という声がほとんどでした。そもそも外国人と接点があるようなアメリカ人というのは実はかなり限られた中上流階級の人たちでアメリカで暮らしていても大企業の駐在員だと所詮同じような人たちとしか付き合うことはありません。大統領選挙でクリントンが勝った州をみるとほとんど海岸沿いの豊かな州で南部・中西部などのあまり豊かでない州はほとんどトランプが勝ちました。南部・中西部などだと日本でいえばマイルドヤンキーのような人たち(もともとヤンキー=アメリカ人の俗称なので使い方奇妙ですが)が多く、実はパスポートを持っていない一生旅行でさえ海外に行かないのはこの層ではほとんどなようです。日本だとマイルドヤンキーというのはあまり上昇志向がなく比較的低収入、しかし地元の仲間と身の丈の合った生活をしていて幸せな人たちですが、おそらく本場の米国中西部・南部ヤンキーたちも以前は同様の生活をしていたのではないかと思われます。しかし、アメリカでは格差がどんどん広がりこのようなマイルドヤンキーが怒れるヤンキーになってしまったのかと想像します。その矛先として移民や外国企業、そして大都市のエリートたちというわかりやすい、しかしその存在はテレビくらいでしか見たことのない敵に向けたことがトランプの勝利になったと思います。
同一労働同一賃金という「同じ仕事には同じ賃金」という考え方は能力がある人は若くても主婦でもフリーランスでも高収入をえれますが、単純に適用すると同じ仕事をやり続けて年功を積んでも一生手取りが変わらない人たちを生み出します。非常に活力ある社会を作れる一方で影の部分は大きくなります。アメリカの地方の工場やチェーン店などにいたアメリカのマイルドヤンキー達は、(例えば一流大学院新卒のシリコンバレーのエンジニアなどは初年度年収12万ドル(約年収1200万)を稼ぐのに)いつまでたっても約2~3万ドルで一生あがりません。日本のマイルドヤンキーのように身の丈に合った生活をしていても生活がきつくなったり、その約2~3万ドルの仕事も失いもっと安い賃金の仕事に流れざるをおえないと怒れるヤンキーになってしまうわけです。日本もゆっくりとこの方向に向かっているような気がします。
アメリカ企業に働いて思うのですが、いわゆる幹部社員は上昇志向が高い人が非常に多くエキサイティングな一方でなんだか疲れを覚えることがあります。上昇志向が強い人ばかりの社会は息苦しいわけで、いろいろなタイプの人がそれなりに幸せに暮らしていける社会は大切だと思います。日本も方向としてはどんどん能力を持った人たちがその能力を発揮できるような社会を作っていく方向が正しいと思うのですが、その一方で影の部分も考えていく必要があるというのが今回のアメリカ大統領選挙の教訓かと思います。