なぜ返済猶予しても中小企業の経営は改善しないか?

再生

今朝の日本経済新聞の記事で地方銀行など106行が返済猶予など融資条件の変更に応じた中小企業のうち6割強が4年以上たっても経営改善していないことが金融庁の調査で分かったようです。2009年中小企業円滑化法が施行され、本来の趣旨としては経営不振の中小企業が返済を猶予してもらっている間に再生するといったシナリオですが、その後もリスケ(条件変更)で元金支払い猶予などを繰り返して経営が改善していない先が多くあるということです。

記事の論調としては銀行が47%しかリスケ先に再建計画づくりなどの支援をせず、担保や保証協会(中小企業の借入金の保証をする公的機関)の保証でカバーされているためと銀行に批判的です。ただ、銀行も営利事業であり、収益としての利息が入り元本も担保、保証でカバーされていたら特に何もしないのは合理的でしょう。私自身は再生専業ではないですが経営改善の一環として中小企業の再生は手がけることがあり、そのような関係で再生専業の方や金融機関や関連機関の方などと接することはよくあります。とはいってもサンプルも少なくまじめに真摯に行っている方から見ると乱暴な見方かもしれませんが述べると以下です。

まずもともと返済猶予の際に計画を作成しますが、再建計画で重要なのは再建にかける経営者の熱意と再建案の品質だと思います。そして経営者の熱意と再建案の品質はリンクしています。したがって、本来あるべき姿は「経営を再建したいから再建案を作る」なのですが、実際には「再建案を作ると銀行が返済を猶予してくれるから作る」といったケースが多い気がします。そのような姿勢ですから企業再生の専門家にほぼ再建案は丸投げといったケースが少なからず見受けられます。本来再生の専門家も「中小企業の経営を立て直して社会の貢献したい!」という熱い思いで経営者と再建に向けて侃々諤々の議論とアドバイスをして計画を立てたいと思っていた方も多いようです。しかし、実態は丸投げされてしまうと「銀行や関連機関が納得しやすい再建計画」作成になってしまい、「再建案の品質」として、とにかく作成資料の細かい数字の整合性にかなりの努力を注ぎ込む結果になります。再建計画をいかに早く作るかとエクセルのスプレットシートの洗練度がどんどん高まっていくだけに陥りがちです。経営者としてはリスケさえしてくれればいいので、継続支援などはもともと求めていません。もしかすると専門家も単に数字作りだけができるだけで実際の再建の能力がない方もいるというのも原因である可能性はありますが。

結論としては政治的には難しいし冷たいようですがどこかでリスケの繰り返しという延命装置は外さないと社会的コストがかかりすぎます。しかも、経済のダイナミズムとして参入と退出というのは一定数必要です。あまり事業に情熱はないのだが継続している理由に経営者が個人保証や担保で事業を止めると身ぐるみはがされるという問題があります。したがって担保処分や保証の履行で経営者が身ぐるみはがれることのないように手当しつつ、静かにやる気のない先は退出してもらうことに税金をつぎ込む、「幸せな廃業」のほうに力をそそぐ方が良いのではないでしょうか?このあたり私も銀行や保証協会、中小企業支援協議会などとも連携して考えていければと思います。

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