転職しやすい国の潜在成長率が高くなる?

転職

今朝の日本経済新聞で転職がしやすい国ほど潜在成長率が高くなるという分析をOECDなどのデータで示しています。そして、理由として転職しやすい国ほどより収益力が高い成長分野に移動しやすくなり経済全体を底上げしやすいと仮説を立てています。このような統計的因果関係については逆の因果関係もあるので注意が必要です。少し意地悪な見方をすると潜在成長率が高い国はどんどん収益力の高い新しい産業が生まれ、そのため転職もしやすくなるという逆の因果関係も考えられます。たとえばアメリカなどでもシリコンバレーなどは他の地域などより転職が非常に盛んですがこれは転職がしやすいから新しい事業が起こるというよりも、新しい事業がどんどん起こるので転職がしやすいという面が強いと思います。

少し意地悪な見方をしましたが、人手不足に悩む日本のベンチャー企業などを見ているとある程度上記の仮説はうなずける面はあります。転職しやすい社会をつくる道として解雇の金銭解決や「脱時間給」があげています。ロジックとしては解雇がしにくいので転職市場が小さいし、「時間給」があるので生産性をあげようという動機が低く、結果的にマクロ的には賃金が上がらないとしています。私はかつて欧米系の企業で働いていましたが、ホワイトカラーには残業という概念がありませんでした。若くてもどんどん昇進、昇給は可能で一般企業でも20歳代で年収1000万は普通に可能でした。しかし一方でホワイトカラーでも昇進できないと当初の年収300~400万くらいで年齢が何歳でもほぼ変わりません。人事は調査会社を使って、賃金が他社と比べて低いようなことがないか非常に気にしていて常に賃金的競争力は保とうと努力していました。社長役員クラスの欧米企業の高さもよく言われていますが、中間管理職クラスでもほぼざっくり欧米企業の方が1.5~2倍くらい高い感がありますし、トップグループの昇進の速さは2倍以上でしょう。

ただし、ジョブセキュリティという安定性は昇進するほど低くなり、解雇リスクは高まります。不祥事でもない限りよく欧米の映画であるような「今日中に荷物を持って退社、退職するように」といったことはありませんが(金融業界はあります)、2~3回上司、人事から注意のレターを受け取って改善が見られないと簡単に解雇されます。本当に本人に能力がない場合もありますが、上司との相性が悪く解雇や業績が悪く解雇も多いので、転職の際解雇されたというバッテンよりもそこまで昇進したというプラス面を見てくれることが多く解雇されても転職はさほど難しいものではありません。

企業にとって解雇のしやすさと脱時間給が望ましいかというと、利益をきっちり出して高い賃金をオファーできる企業はどんどん優秀な人を集める、逆に業績が上がらない企業からはどんどん優秀な人が逃げるといった具合に優劣がはっきりしてきます。一方従業員側も能力があってどんどん昇進する人は給与も上がりますが、そうでない人は据え置きといった具合で優劣がはっきりしてきます。いわゆる格差社会には突入する可能性はあります。ただ、ダイナミズムという意味では伸びる企業がどんどん伸びて、優秀な人がどんどん若いうちから昇進して高い給与を謳歌するほうがあると言えます。セイフティネットは何か考える必要はありますが、少子化の日本としてはこの方向に舵を切るしかないのではないかと思われます。

https://ta-manage.com/form/