消費税が10%にあがって -食料品の2%還付の裏側

shouhizei

 

消費税が10%に上がった際、どうするかでいろいろな議論が起こっています。今旬なのは食料品への軽減税率のようです。少し論点を整理したいと思います。そもそもなぜ食料品の軽減税率が必要かということですが、低所得者の方対策だと言えると思われます。食料品の購入額は高所得者も低所得者も(おそらく)さほど変わらないのに消費税値上げのインパクトはほぼ一緒でそうすると低所得者の方の生活を著しく圧迫するというロジックです。単純に食料品だけ税率を据え置けばいいと思われますが、問題が生じます。大きな問題は税率が異なるとインボイス方式と言って税率、税額を明記した書類を発行保存しなければなりません。この発行、保存、計算が非常に煩雑になり大変だということです。

今回マイナンバーを利用して2%還付するという案は新聞紙上では批判が多いですが、なかなかよく考えたアイディアだと感心しました。ただ、想像するにもう一つの論点が隠されている気がします。目的は低所得者の保護ですが実は低所得者にも2通りあります。資産も所得もない低所得者と、低所得だが資産はある低所得者です。

私の知人の税理士の顧問先でこんな件があったそうです。区役所から6000円還付されるので銀行口座を教えてほしいと電話がその顧問先にかかってきて、心配なので相談を受けたようです。その顧問先は会社経営者の奥様でご主人はなくなられましたが息子さんたちは一流企業勤務、豪邸に住み悠々自適の生活、新車のベンツの買い替えの話を知人としていました。知人はこのようなお金持ちに口座教えろとは何かしらの詐欺だと思い、区役所に電話で確認をとったところ「消費税の緩和措置として10月から6000円が還付されます。XXさんは住民税の支払いを課されない世帯ですから」でした。要は単純に低所得で線引きするとベンツを買い替えるような家庭も減税になってしまうことがあります。

そこでマイナンバーです。将来は所得だけでなく銀行預金など資産もガラス張りになる可能性もあります。したがって消費税の還付方式だとこのようなリッチな低所得者は減税の対象者から除くことができるわけです。そういった意味で食料品2%還付はなかなか考えられていると感心するわけです。

後日談ですが知人の顧問先は6000円は「せっかくもらえるものだからもらっておこう」ということでした。自分も同じ立場だったらそうしそうなので批判はできません。ただ、知人は「あの人だったらちょっと日本橋か銀座あたりでランチ友達と食べに行っておしまいだよね」と苦笑いしていました。