日本の借金と富裕層徴税強化

kanemochi

日本の借金は増え続けています。この感覚どこかで覚えがあると思ったところ、赤字事業のCFOをしていた時だと思いました。キャッシュフローが赤字なので現金残高が刻一刻と減っていき、資金調達に走りまわっていました。憂鬱なのは、借金がどんどん増えていって減る見込みが立たないときでした。

今日本の借金がそのような状態で1000兆を超えてまだ毎年増え続けています。日本の個人の金融資産が約1200兆程度ですからほぼ釣り合った状態です。よく日本の借金のうち、「海外債務がないから大丈夫」というロジックがありますが、これは極端な話だと個人の金融資産を召し上げれば大丈夫ということになってしまいます。

法人税は全世界的に減税の傾向にあり、その一方でタックスヘイブンなどに利益を集中させる手法をOECDなどが規制しようとやっきになっています。しかし、特に巨額の利益を上げる多国籍企業の場合どこに本拠を設けるかは自由になりつつありますから法人税が高いとその国から脱出されてしまいます。

借金を減らすのは支出を減らすと収入を増やす、2つを行わなければなりませんが、収入を増やす本丸はやはり消費税でしょう。いったん導入してしまえばなかなか脱税も難しく、確実に税収があがります。また、世界的に税率10%未満な先進国はカナダ位しかありません。ただし、一方で逆進性というやや収入の低い人に厳しいという面があります。年収2000万の人が年収500万の人の4倍消費はしないわけで、年収に占める消費税の割合はほぼ確実に年収の低い人が高くなります。

そこで出てくるのが富裕層徴税強化です。野村総研の調査では金融資産1億超の富裕層の世帯数は全世帯の約2%弱です。したがって、その声は政治的にはあまり大きいものではないでしょう。そのため、ここ数年で所得税の最高税率が45%になり相続・贈与は55%にそれぞれあがりました。その他、海外財産調書、出国税など海外に資産を動かす動きにもストップをかけています。国の借金を返す際の増税として消費税を考えていますが、その際必ず「庶民の生活を苦しめる税」という反対論が出てきますから、その前に富裕層は十分叩いておく必要があるわけです。富裕層徴税強化で庶民の溜飲は下がるかもしれませんが、おそらくそれは消費税増税のために地ならしの一種と思われます。