税理士が本音で語る。“食料品ゼロ税率”を安易に支持しない理由

 物価高対策として、「食料品の消費税を恒久的にゼロに」「いや2年かの時限措置」など議論が続いています。その際「ゼロ税率」ではなく「非課税」という言葉もよく使われます。しかし、実は税務の現場では意味がまったく違いますのでそのあたりからお話をしたいと思います。

目次

1.非課税とゼロ税率の違い(シンプルに)

 違いは一つです。仕入税額控除ができるかどうかです。ゼロ税率で売上の税率は0%の場合。
仕入で払った消費税は控除(還付)できます。企業に税は残りません。

 一方非課税、売上に消費税はかからないという点は一緒、しかし、仕入で払った消費税は控除できません。つまり払った仕入れの消費税は全部企業負担になります。同じ「税がかからない」でも、企業の負担は大きく変わるわけです。

 簡単な例を挙げると税抜き売上1000万で仕入が800万の食料品小売業があったとします。ゼロ課税だと仕入れ800万に64万(800万x8%)の消費税を仕入時に加え864万支払いが生じますが、この64万は消費税申告でまるまる還付されます。しかし、非課税はこの部分は還付されません。大きな違いですよね。

 ではそもそもこのゼロ税率の場合本当に物価は下がるのでしょうか?

2.本当に物価対策になるのか?

 ゼロ税率なら理論上は価格が下がる余地があります。

1,080円(本体1,000円+税80円)→ 1,000円

 しかし、実際の価格は市場が決めます。原材料高、人件費上昇、競争環境、これらを考えると、必ずしも8%そのまま下がるとは限りません。コメのように市場原理が働かないモノがあることも見過ごせません。

 加えて外食と昼食の差の課題も生じます。仮に、持ち帰り(中食)→ 0%、店内飲食 → 10%となれば、外食は価格面で不利になります。

 1,000円の商品が店内なら1,080円、持ち帰りなら1,000円、日常消費ではこの差は大きいです。税制が外食と中食の競争構造を変える可能性があります。そしてほかにも副作用はあります。

3.見落とされがちな「資金繰り」の問題

 ゼロ税率は仕入税額控除が可能ですが、すぐに現金が戻るわけではありません。還付には時間がかかります。中小企業の消費税申告は年1回または四半期申告、毎月の申告も可能ですが煩雑です。加えて還付は税務当局がなかなか手続きを早急を進めません。数か月かかることもあります。これは消費税還付をめぐる不正が多いのでやむを得ない面もありますが、その間、企業は資金を立て替えることとなります。もし導入するならば税務当局はよほど疑念がない限り1週間程度で還付手続きに入ってほしいものです。

 特に仕入が多く、ゼロ税率が多いと還付超過が発生しやすいです。資金繰りに余裕がなければ、毎月申告に切り替えて早期還付を受けるといった対応が必要になりますが税務当局のさじ加減一つでいつお金が戻ってくるのかわからないというのは頭が痛いです。

 つまり、ゼロ税率は理論上中立でも、資金繰り上は負担が生じる可能性があるという点は見落とせません。

4.まとめ

以上を経営者の目線で見ると重要なのは、

✔ 税率より課税方式(ゼロ税率か非課税か)
✔ 原価への影響

✔外食と中食の競争構造に影響
✔ キャッシュフローへの影響

 ゼロ課税は原価上昇、競争環境などによっても大きく変わり、還付遅れによる資金繰り問題、どちらも「単純な減税」ではありません。加えて本当に物価対策になるかは設計次第です。

 税理士的にはどんどん消費税の処理が複雑になるので食料品税率ゼロやってほしくないというのが本音です。むしろ軽減税率も撤廃してほしいくらいというのが本音です。