交通機関をめぐるインボイスのポイント

目次

1.インボイスと交通費

 何度かこのブログでも取り上げてきたインボイス問題、今回は交通費をめぐる整理をしてみたいと思います。10月1日からインボイス制度が始まりますが、その際、事業者はインボイスを入手し保存する義務が基本的には生じます。その際交通費はどうするのでしょうか?多分、現状ほとんどの方が遠方に新幹線等で向かうようなケースを除けば、SUICAチャージなどで済ませて、領収書そのものを入手していない方がほとんどだと思います。いちいちインボイス制度が始まったら自動券売機または有人窓口で領収書をもらわないといけないの?ということが疑問になります。

 ただ、インボイス制度が始まっても公共交通機関の特例があります。これは、3万円未満については特にインボイスの入手・保存をせずに帳簿への記載で足りるというものです。したがって、いわゆる近隣交通費においてはインボイスの保存は必要ないですし、例えば東京広島を新幹線で行ったとしても片道だと約18,000円でインボイスの保存は消費税の観点からは不要ということになります

 ただ、もし往復で購入したらどうなるかというと18,000円x2=36,000円で3万を超えますのでインボイスは必要ということになります。

 ただ、この公共交通機関の特例、飛行機とタクシーは含まれません。したがって、この2つはインボイス必要です。多少気になるのはタクシーですがいわゆる法人タクシーは現状レシートで出力している機械で簡易インボイスの形態でインボイスを発行できるため特に問題はないです。ただ、個人タクシーはそもそも適格請求書発行事業者にならない場合も多いと考えられ、インボイスを入手できないことは十分考えられます。

 また、交通費に関するものについては他にいろいろ適用できる特例があります。

2.交通費をめぐる特例

 これは必ずしも交通費に限らないのですが小規模事業者に対する特例があります。基準課税期間の課税売上が1億円以下(かつ1年前上半期の課税売上が5千万以下)の小規模事業者は1万円未満についてはインボイス保存の義務がありません。したがって、タクシーはよほど遠距離で利用しない限りインボイスの保存は不要ですし、飛行機もLCCであれば不要かもしれません。                                                                                              

 一方、従業員が出張した時どうするのかという問題が生じます。交通機関を利用したのは従業員であり会社ではないです。従業員が立替えしているわけですから支払いは従業員に対してであり従業員はインボイスを発行しないといけないのでしょうか?

 これについては出張者特例があり交通費だけではなく宿泊費や日当、通勤手当などもインボイスは不要です。一方ではインボイスが必要なケースにおいての交通機関側の対応はどうなのでしょうか?JR東日本の対応が税務通信に取り上げられていたので例として紹介します・

3.JR東日本の対応

 JR東日本では、券売機や有人窓口において簡易インボイスを金額にかかわらず交付する対応をすでに整えているようです。定期券は例えば6か月定期を4月以降に購入した場合、インボイスが必要になるケースがありますが、すでに自動券売機では対応済だそうです。

 少し厄介なのが、令和5年10月1日以降の指定券の購入を該当日以前にした場合です。これは窓口で簡易インボイス発行を依頼しなければならないので注意が必要です。また、払い戻しの場合は窓口で払い戻しを受ける際、返還インボイスを入手しなければならないのでそれも注意です。

 良く誤解されるのがSUICAチャージです。インボイス制度導入とは関係なく、そもそもこれ自体は不課税取引で消費税は課税されない建付けです。そして、実際に交通機関を利用した時、消費税が課税です。たまに、チャージ額を課税取引として消費税額控除をしている方いらっしゃいますが、本来はできません。ただ、チャージ自体は例えばSUICAの場合、2万円までとなっているのでインボイス制度導入に伴う問題がないのではと思われます。

 インボイスの対応については我々利用側よりも、対応する交通機関側がいろいろ大変だろうなと少し気の毒に思われました。