少しはっきりしてきたインボイス負担軽減制度

目次

1.財務省による負担軽減

 財務省が1月20日に「インボイス負担軽減措置のQ&A」を発表しました。そもそも、この軽減措置ざっくりまとめると以下の4つの柱からなるといえます

 ・小規模事業者に対する税額控除の関する経過措置
 インボイス制度導入に伴い課税事業者になった免税事業者、課税標準額(一般的には売上)に対する消費税額の2割を納税するという仕組み
 ・少額特例
 課税売上1億円以下(特定期間売上5千万以下)の事業者は1万円以下の取引についてインボイスの保存義務を免除
 ・返還インボイス交付義務免除
 税込み1万円未満の取引については返還インボイスの交付義務を免除 
 ・登録制度の見直しと手続きの柔軟化
  登録3月31日までに必要だった。一応9月30日までに登録しても10月1日からの登録開始は可能であったが「期限までの申請が困難であった事情」の記載が求められていたがこれは廃止され、5年10月1日以降の申請については登録希望日30日前の申請から15日前に緩和

ただ、当然詳細な取り扱いについて不明点がありましたがいくつかこのQ&Aによって明らかになりました。このあたり見ていきます

2.小規模事業者の税額控除に関する経過措置と少額特例

 前述したようにこの税額控除経過措置、これは8年9月30日までですが、例えば個人事業主は8年10月1日から2割特例がなくなるのかという疑問があります。要するに10月1日から12月1日からは別途簡易課税または本則による消費税計算が求められるのか不明でした。

 このQ&Aの記載を見る限りこの期間が属する課税期間となっているので8年度の申告、つまり12月31日までは適用が可能ように見えます。つまり8年度においてはずっと2割特例のままで構わないようです。したがって3月決算の場合は9年3月までの取引はこの2割特例が使えるようです。

 また、簡易課税の届を出していてもこの特例の適用に問題ないのか?というなんとなくの不安がありましたが、これは問題ない旨記載されていてよかったです。ただし、基準期間(前々事業年度)に課税売上1千万超の場合はこの特例は適用できないのでそれは注意です。

 また、少額特例においては一つの取引で判断すると明確化されています。したがって、1万5千円の取引を領収書8千円と7千円の分割して払ったからインボイスの保存必要ないよねというのは無しということです。

3.返還インボイス交付義務免除と登録制度

 返還インボイスの件、話題になったのが銀行手数料の差し引きの問題です。支払手数料処理だと顧客から立替清算書とインボイスをお願いしないといけないし、売上の値引きと処理した場合返還インボイスの発行が義務付けられていたのが問題でした。この1万円未満の返還インボイス交付義務の免除で半分解決していました。

 ところが、このQ&Aで支払手数料処理をしても実質的に売り上げ値引きだとわかる記載があれば差し支えないということになったので支払手数料処理でも問題にならないことが分かりました。

 一方、適格請求書の登録制度ですが要するに9月30日までの登録で10月1日からの適用可能
となったわけです。ただ、1か月くらい番号の登録まで時間がかかるので早めに越したことはないと思われます。「5年10月1日以降の申請については登録希望日30日前の申請から15日前に緩和」も含め、何とかインボイス制度を根付かせようという財務省と国税庁の意図はよくわかります。

 ただ、税理士的にはどんどん特例が出てくると間違えの可能性高まりどんどん地雷が増えていくような気もするんですよね。