コロナ関連の助成金で思う事
目次
1.持続化給付金始まる
持続化給付金の受付が5月から始まりました。細かい内容はネットではさまざまな解説が出ているので、そちらを参照していただいた方が良いと思います。いろいろな士業の方などが丁寧に説明されていて無料で公開、頭が下がります。さて、持続化給付金、すごくざっくり説明すると、前年度から50%売り上げが落ちた月があれば、その落ちた売上相当分を一定限度助成するというものです。
これに対し、ザルで不正が相次ぐのではないかと批判する声をちらほらネットでみました。意見としては、コロナと関係ない単なる売り上げ不振もまじるのではないか。売上の月次レベルの振替など簡単にできるのではないかということです。どうなのでしょうか?
2.持続化給付金はザルか?
確かに年度をまたいで何か会計操作するのは、きちんと見ますがあまり月次レベルで入り繰りがあっても税理士してもあまりとがめないケースが多いと思われます。また、意図的でなくても一般的な売上げ不振とコロナによる売上げ不振を区分するのは難しいです。
例えば、私の経営するコンサル会社の場合、12月に行ったプロジェクト第2弾は2月からは始まることになっていました。それは、海外の子会社に関するもの、お客様からはコロナの影響でしばらくペンディングにするという連絡が来て今も始まっていません。でももしかするとそれは単なる口実で実は12月のプロジェクトの私の仕事ぶりが悪くて、キャンセルした可能性だってあります。・・ということで自分の例だけ見ても厳密に適用することは不可能ですよね。
これを変に厳密に運用するとすると、役所のことですから平気で押印入りの証明書を顧客からもらってこいなどとやたらとハードルが高くなってしてしまうでしょう。まして、士業に証明書を出せなどと感染防止協力金のようなハードルをもうけたら
リスクが高過ぎてまともな士業はまず証明出せません。
正直、この施策をザルのバラマキと批判するのは非常に簡単です。しかし、不正を防ぐために万全の手続きをするとどうなるかの例が他のコロナ関連の助成金であります。それが雇用調整助成金です
3.悲しいコロナ関連特別雇用調整助成金
これも簡単に言うと企業がコロナ関連で従業員に休業手当を出して休んでもらった際それを助成するというものです。もともと、従業員の安易な解雇を防ぐため存在していたものが、コロナ特例で大幅に簡略化されたと当初は発表されました。しかし、簡略化したといっても10種類程度もも提出書類があり、専門家である社会保険労務士でないとほぼ作成は無理です。しかも作成社労士は連帯責任が求められていました。厚労省の事後監査があり不正があると社労士も場合によっては依頼主に代わってすべて不正額を弁償をすることを求められることあるというものです。これはリーマンショックの際、不正があったので見直されたということです。私も同じ立場であればよく知っているクライアント以外は受託したくないです。
加えてオンライン申請も認められず印鑑もたくさん押す必要があり、平気で提出書類は数十枚になってしまいます。そもそも休業補償を支給した後、つまりお金が出ていった後でないと申請できない上、かつ膨大な資料なので見る方も大変、実際の支給まで時間が非常にかかり、不幸にも資金繰りが待っている間に破たんするという悲劇も考えられます。
おかげで4月24日までこの申請はたったの2541件、支給はなんとたった282件です。相談窓口は完全にパンクで全然電話つながらない、窓口相談は3~4時間待ちは当たり前の超3密状態です。このように不正なくすためのチェック体制を万全にしようとするとほんんど使い物にならないモノにしかなりません。ただ、現場の方々だけでなく厚労省の本省の方々もがんばってないわけではないと思います。
4.実はお役所も頑張ってはいるが・・・
今も10種類といって元はもっと膨大でもっと大変でした。また、中小企業の場合、支給した休業手当が100%支給だとほぼ100%近く(金額の上限あり)支給されることになり助成額も大幅に拡充されました。 社労士の連帯責任については私がある知り合いの国会議員秘書を通じて厚労省に改善を依頼したところ、すぐに至急改善を検討すると厚労省から回答があり、翌々日には連帯責任は解除されました。多分私の声だけで判断しているわけではないと思いますが、厚労省の方々もいろいろな声を受け止め、懸命には努力されているようです。
確かに国の対策で足りないところや杓子定規なところ逆に持続化給付金のようにザルな部分あるかと思います。ただ、今はお役所をやたらと批判して叩く時ではないでしょう。ただ、事後検証はきちんとやる、ただしありがちな個人に責任を押し付ける戦犯探しではなく改善案を出すためのものであってほしいです。
お役所にあえて申し上げることがあると言えば省を超えた協力はお願いしたいと思います。なんとなく持続化給付金を見ていると所管の経産省と国税庁の連携が今ひとつな気がします。
小さな例だと確定申告書の問題です。収受印の必要な確定申告書必要、個人事業者ではきちんと取っていない人がいます。税理士的に言えばそんなのとっておかない方が悪いという面もあるますが、制度としては税務署で原本で閲覧ができます。ただし、コピー、写メは通常禁じられているようですが、このような助成金に必須なケースは本人確認を条件に限定的に認めてもよいのではないでしょうか?
なんとなくこれは経産省の施策のために仕事が増えて迷惑(ただでさえいろいろと忙しい税務署がもっと忙しくなるかもしれず、同情は致しますが)、あまり関係ないといった空気が一部あるような気がしてなりません。変な縄張り意識や姿勢は是非改めて国難にあたっていただきたいと思います。