パート賃上げが生み出すもの

keibi

人手不足を背景にパートの待遇改善が進んでいるようです。日本経済新聞の記事では小売りや外食の労働組合で構成するUAゼンセンで今年春のパート一人あたりの平均賃上げ率が2.28%と過去最高になったようです。マクロ経済的に見れば個人消費の拡大→好景気という面もあるかと思いますがミクロ的に見れば人手不足やパートの賃上げで特に苦しむのは下請け系の中小企業でしょう。

以前お聞きしたのは土木工事の警備会社の話です。土木工事自体は大手建設会社が受注するのですが警備会社はその3次~4次下請けになります。すると当然間に入った企業がマージンを抜いていくのでおおよそ受注金額は半分になるようです。また、土木工事の主体である国や地方公共団体もコストは下げようと努力はしていますので受注金額は下がる方向にあります。一方で警備員の時給は賃上げをしないと人は集まらない状況で非常に厳しくなっています。その結果非常に利益はほとんどない自転車操業的で苦しんでいるようです。これは全ての下請け、特に品質や性能で差部化できない場合は共通して厳しい競争にさらされます。

よくゼネコンなどは仕事は受注するがほとんど仕事は下請けにやらせて儲けていると批判を受けています。しかし、発注側としては建設土木工事で個々に注文すると確かにその個々は安くなるとは思いますが全体的な工事という複数の手続の納期・品質・価格を管理していくプロジェクトマネージメント能力はあまりないため、やはりありがたいものだと言えます。ビジネスモデル的に言えばパッケージングモデル複数手続き代行型で様々な複数の手続きをパッケージの形にしていくことで付加価値を生み出していくわけです。発注側にとってはありがたい存在です。問題を挙げるとすると建設業などは多段階の重層的な下請け体制でしょう。自分ですべてマネージできず、丸投げして重層化していけばいくほど高コスト体質になってしまいます。

下請け企業としてはこの重層構造の下部からの脱出を図りたいと思うでしょう。前述の警備会社は直接役所の方に運動しているようですが、あまりよい回答はないようです。役所としてはゼネコンに一括して発注したほうが手間がかからず安全というのは理解はできます。私の経験ではありますが、下請けから脱出するためにはある程度差別化ができるような特殊な技術や手法を生み出す、または自分自身パッケージング化ができるように人間関係法人関係を構築していくことになるでしょう。当然前者ができれば素晴らしいのですが難易度は高く、後者も検討していくことが大切だと思います。

しかし、実は下請け関係というのは決まった発注先がありそこからある程度安定的に仕事は入ってくるので、意外にそこに安住してしまう中小企業は多いというのが私の印象です。そして大口発注先の経営が悪くなると連鎖倒産というのが典型的な最期です。これに今回の人手不足による賃上げで価格交渉力のないところは長い目でみると淘汰されていくでしょう。気が付いている方は多いと思いますので早く手は打ってほしいものです

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