産業革新機構のリスクマネー試練

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日曜日の日本経済新聞で産業革新機構のベンチャー育成に批判的な記事が載っていました。記事の論調としてはVC投資で今までエグジット(投資終了)の際23件のうち4社しか回収がされず勝率は17%、政府のお金である財政投融資が資金の95%を占めるので野放図な投資が行われているのではないかという話でした。また、個別案件の損益についてリスクマネーの委縮が生じるので開示をしていませんが、国の案件を開示している以上堂々と個別損益開示すべきと批判的です。

私の今までの記事から見た産業革新機構の印象としては事業再編統合ではジャパンディスプレイや今回の東芝メモリーの件で存在感はありますが、ベンチャー投資のイメージは薄いです。ただし、違和感を感じるのは、この勝率の低さを大手ベンチャーキャピタル(VC)と比較していることです。大手VCはある程度事業基盤もしっかりして上場が見え始めたころ(いわゆるレイトステージ)に現れるので勝率が高いのはある意味当たり前です。多少上場の環境にもよりますが、一般的にこのステージになればどのVCを選ぼうか悩むほど殺到してくるので別に国が関与する必要はありません。足りないのはもう少し前の段階で良い技術は持っているが、まだビジネスにうまく結びついていない段階ではないかと思います。そういった意味で勝率は17%でも全然低くないと思います。どちらかというと勝率ではなく勝った内容でせいぜい投資と同額で買い戻してもらった程度で一般的にはこれは「勝った」とはいいません。本当にリスクマネーの投下ならば勝率ははるかに低くて構わないのですが、投じた資金の10倍以上の回収があった「大勝利」が1件もない方が問題だと思います。

産業革新機構の主なメンバーを拝見する志賀会長のように大企業出身、大手銀行出身者、官僚、再生ファンド出身者などが主でベンチャー投資畑の方は少ない印象があります。これは偏見かもしれませんが、大企業や官僚、大手銀行の経歴が長い方とベンチャーの相性は一般的によくないと思います。物事の進め方のペースがベンチャーは乱暴なくらい早いですが、このような方々はきっちりと時間をかけてやっていく、悪くいうと官僚的なので水と油です。記事を見ると機構出身の社外取締役の議事録に記載された意思決定の改ざんを投資先が後日求められたり姑息な官僚的な側面が見えます。ベンチャー出身の方などで社内の雰囲気があまりに官僚的で嫌になって辞めたという話も聞いたことがあります。ちなみに私は政府がベンチャー投資に関与すべきかどうかについても多少懐疑的ですがその議論はここではしません。

結論として、産業革新機構はベンチャーに投資をするような社内の文化、体制を構築しないとベンチャー投資では成功しないのではないかなと感じます。

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