商工中金の不正融資

shoukou

 

商工中金が国の制度融資を不正にかさあげした問題で業務改善命令を財務省・経済産業両省が発令しました。リーマンショック後に創設した「危機対応融資」を不当に膨らませていたと日本経済新聞が報じています。この「危機対応融資」は「政府の指定を受けた金融機関が中小企業に必要な資金を貸し付け利払費を支援する」ものですが「財源は国がまかない資金繰りが悪化した中小企業に担保なしでも融資する」もので要するに税金です。

大きな組織ですからたまには悪用する人間が出るのはやむを得ない面は通常あるのですが、新聞で見る限り組織的な行動のように読めます。全体の1割の調査だけで100人規模の関与と815の不正行為が発覚しています。そして手口が取引先の財務資料を書き換え、売上高を小さくするなど業績が悪化しているように見せかけたと書かれています。不思議なのは財務資料の書き換えという手口です。通常金融機関は融資の際、税務署に提出した税務申告書の提出を求めます。通常融資審査資料を改ざんしたとしても決裁者は当然税務申告書と売上や利益などの少なくともチェックしますからそこで発見されます。つまり想像するに決裁者レベルの積極的な関与があったと考えられます。会計士的な見方であれば内部統制が全く機能していない組織と言えます。また、金融機関で組織的に審査資料を改ざんして不正融資をし、かつ税金がそれに投入されていたということでしたら(刑法上は法律の専門家ではないのでわかりませんが)明らかな犯罪行為にしか感じません。

そして、新聞が伝えることによれば危機対応融資残高は商工中金の融資残高の32%を占めるようです。そして、社長は元経産省次官の安達健祐氏で、今回の大規模な不正によっても辞任はしないようです。いわゆる役所が補助金を作る、その補助金で政府系機関が仕事を作って、そこにその役所から天下るという非常にわかりやすく残念な三角形ができています。おそらく辞任しない理由も個人的にしがみついているのではなく、天下りの指定席が失われる省益重視ではないかと想像されます。私は高級官僚の方が第二の人生でその能力を活かして高収入を得ることはむしろ素晴らしいことだと思っています。しかし、一方で税金を使って高収入を得る巧妙な天下りシステムを作ることがまだまだ多く、信頼性を失っています。特に補助金・助成金がその温床となっているのではないかと疑っています。そのためにも会計検査院などの補助金・助成金監査方式にもうすこし、公認会計士や外部有識者の視点を入れて変えていく必要があるのではないでしょうか?