なぜトランプ現象は起こったか -最後の資本主義

raishu

年末年始「さぁ本読むぞ!」と思い結構本を買い込んだのですが、結構ぎりぎりまで仕事をしてかつ年始は早々に仕事を始めたのでいまだにそのころの本を読んでいます。さてその一冊がこのロバートライシュさんの「最後の資本主義」です。この本を読んでなぜトランプ現象は起こったのかが非常によく分かったのですが、この本自体は実はその前に書かれたいわゆる「トランプ現象解説本」ではありません。

アメリカでは常に政府が市場に介入する大きな政府(民主党)と市場にまかせた方が良いと考える小さな政府(共和党)の2元論が盛んですが、ライシュさんはどちらにも与さないと述べています。この「市場」は「自由市場」と考えられていますが実は最大の経済勢力をもつものがその権力を使ってそのゲームのルールを自分に有利に変えているからです

みなさんにもなじみが深いものとしては「ミッキーマウス法」があります。本当の名前はソニー・ボノ著作権延長法といい、簡単にいうとミッキーマウスの著作権が切れそうなのでディズニーがロビー活動をして著作権の保護期間を1977年までに発表された作品の法人著作権を75年から95年まで延長したものです。これによってミッキーマウスの著作権は2023年まで延長されました。このように巨大企業はその力を使ってどんどん自分に有利な法律を作っていきます。また、富裕層も非常に低いキャピタルゲイン課税やほぼ存在しない相続税など自分に有利な税制を作っていきます。

その結果アメリカ社会は上位1%が個人資産の42%を所有するきわめて貧富の差が激しい社会になりました。一方中間層は貧しくなり中下層に転落しました。そしてこれが自由な競争の結果でなく非常に不公正なゲームのルールによって生じていることが大きな問題だと訴えています。私のトランプの支持者はあまり教育程度の高くない中西部や南部の田舎に住む白人のイメージがありましたが、こういった不公正に気付いている比較的教養の高い人々も実は支持している、いわゆる隠れトランプ支持者の理由がわかってきました。

しかし残念なのはトランプ氏自身は実はゲームのルールを変えた権力者側の人です。そしてこういった不公正の原因をこういった権力者の行政・政治への不公正な介入ではなく、移民や外国におき今のところ本質からそれた議論をしています。彼が現状の政策の延長線上でいく限り、アメリカの中間層が救われることはないと思います。日本がアメリカから絶対学んではいけないことで他山の石としたいところです。

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