タックスヘイブン対策税制の適用強化について思うこと

タックスヘイブン

財務省は2017年度税制改正でタックスヘイブン対策税制(CFC税制)の強化が行うようでそのインパクトについて日本経済新聞で特集が組まれています。パナマ文書問題で明らかになった企業や個人の税逃れを防ぎ公平性を担保することで将来の増税方向への理解を得ようということなのでしょう。

ざっくりCFC税制を説明すると趣旨は低課税国にある海外子会社に日本の親会社の所得を移転している場合、その海外子会社の所得(親会社持ち分)に対して日本の税率で課税しようというものです。したがって本来海外できちんと事業をやっている場合、CFC税制は適用になりません。変更点は「低課税国」の定義が税率20%未満であったのですが、様々な資産性所得に恩恵があるオランダ(税率25%)などに子会社を設立するなどの行為が増えたのでこの20%未満基準を撤廃するのが趣旨です。

方向性としては正しいとは思いますが、問題点としては適用除外を受けるための資料の保管の煩雑さと恣意的運用です。単純に20%基準だけ取り外されると、すべての一定規模以上の海外子会社について適用除外について資料を作成し申告書に添付しないと課税の対象になってしまう可能性があります。また、海外子会社の適用除外の要件である実体基準(事業を行うための施設があるか)、管理支配基準(所在地で本当に事業が行われ管理運営がなされているか)などがあいまいで税務当局の恣意的運用がなされるリスクがあり実際に現在もそのような声を聞くことがあります。税務当局の担当官の中にはビジネスの常識が乏しくあきれるような考え方をされる方も散見するのでこの点は心配です。

欧米系のグローバル企業が高給で国際税務の専門家を幹部社員として採用して税務チームとして納税率を1%でも下げようとしのぎを削っているのに比べると、ここまでの対応をしている日本企業はまだまだ少数派で、海外進出も租税回避目的よりも真面目な事業目的であるケースが大部分です。一部の不公正を正すために多くの真面目な企業に大きな負担がかかるのは避けてほしいものです。20%基準の撤廃とともに、適用除外条件の明確化と事務軽減を狙った簡素化がセットでないと、日本企業の国際化に対する大きな阻害要件となる恐れがあります。このあたり是非考慮してほしいものだと思われます。

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