こうして免税店の取り締まりは厳しくなった
目次
1.免税店の取引等に関する税制改正
「令和6年度税制改正では、令和6年4月1日以後に国内において課税仕入れを行う事業者が、外国人旅行者向けの免税制度である「輸出物品販売場制度」により消費税が免除された物品(免税購入品)だと“知りながら”仕入れた場合、その仕入れに係る消費税額については仕入税額控除の適用を受けることができないこととされた。」(税務通信9月9日号)
もともと、免税品は、国内で転売する目的で購入することは認められず、免税店は販売する際に、パスポートで本人確認を行うほか、必ず国外に持ち出すことなどを説明することが求められていました。
今回の改正により、免税品を販売する免税店、ドラッグストア、百貨店などに加え、買取り店側にも税法の網がかかったといえるでしょう。ただ、買取り側としては「消費税が免除された物品(免税購入品)だと“知りながら”仕入れた場合」はどんな場合なのか気になるところです。
これについて、税務当局は不自然さ(大量、頻繁な持ち込み)や本人確認をきちんとやっているかなどを勘案するようです。ただ、結局このあたりは税務当局の匙加減となりますよという表現なので、結構当事者は税務対策が必要でしょう。本人確認の書類の紛失などずさんな管理は避けないといけないですし、明らかに大量の持ち込みなどはしっかり断った方がいいと思います。
どうしてどんどんこういった免税品をめぐる税制改正が頻繁に行われるのでしょうか。
2.外国人の暗躍
これは外国人による不正取引事例が頻発しているということがあります。ある国のSNSでは日当1万円買い子の募集(XX百貨店で買って)を堂々とやっています。買い子には事前に購入代金が振り込まれ、それでデパートなどで高級品を消費税免税品購入、転売屋である買い取り先に持っていき日当をもらう仕組みです。転売屋は安く仕入れることができるので儲けが出るという仕組みとなります。
事前にお金を振り込んだら持ち逃げする輩がいそうですが、それをしないということは拷問や殺人も厭わない怖い犯罪組織がバックにあるのだろうと想像します。
こういったことを防止するため、購入者のパスポート情報や購入記録は免税店から国税庁に電子送信され、税関当局に共有されるようになりました。したがって出国の際に購入した免税品を持っていない場合転売がばれてします。税関も例えばそれで2022年度不自然な大量の免税品を購入した出国者に対し22億円の追徴を決定ましたが。しかし、ほとんどは未納のまま出国してしまい未納になっているとニュースになっていました。拘束は難しいとのことでしたが、なぜ脱税容疑で拘束できないのか、そのあたりはよくわかりませんでした。一方販売する免税店側にはどのように税務当局は対応しているのでしょうか?
3.相次ぐ摘発
免税店側に対する対応はほぼ国策調査という印象です。小さめの会社でもやってくるのは税務署ではなく、国税局の資料調査課(通称:料調りょうちょう)だったりします。友人の税理士の顧問先も料調の税務調査で巨額の追徴、廃業に追い込まれました。本人曰く、ほぼ筋書が最初からできている調査でこちらからの言い分は聞き入れない状況、相談した有名な国税OB税理士なども「国策調査だからね」とさじを投げたそうです。
新聞記事ではダイコクドラッグや大手百貨店なども税務調査でやられました。例えば大丸松坂屋が約4億円の申告漏れで追徴を受けた件では「一部店舗で、本人確認が不十分なまま化粧品を販売したり、購入者の誓約書など必要書類を保管していなかったりした事例が相次いで確認された。パスポートの人物とは異なる購入者が同じ商品を免税で数十万円分購入するなど、転売目的が疑われる事例もあったという」(日本経済新聞2023年6月29日)のようにややずさんな免税店側の処理もあったようです。
皆さんも海外旅行した際に経験したと思われますが、海外の街の免税店で購入した場合は購入した時点ではなく空港で返金してもらうパターンが多かったかもしれません。やはり海外は性悪説なのですよね。
令和免税7年度の税制改正大綱での観光庁からの要望として店は一旦消費税込みで外国人旅行者に商品を販売し、外国人旅行者が帰国する際に、税関の確認を経て消費税が外国人旅行者に返金される仕組み(持ち出し確認方式)のイメージが示されています。一部の悪用する輩により免税店での買い物、面倒にはなりますが仕方ないとは思いますね。