清算の際の税金の小さな盲点とは

1.コロナ禍での解散

 コロナ禍において残念ながら顧問先の会社の清算のご依頼を受けることが何回かありました。すべて共通してたのはインバウンド、アウトバウンドといった海外がらみです。まぁコロナ禍でほぼ交流がほぼゼロになりましたから小さな会社などはまず持ちません。

 休眠も勧めていましたが、若めの方の場合はいったん清算して新たな道を模索、少し年配の方の場合は清算してすっきりと引退という道を歩まれました。休眠の場合。経済活動はしないので所得はゼロ、国税である法人税を納付することはないですが地方税では均等割りという税金を納付する必要があるかが課題になります。

 地方公共団体内に事務所を有する場合に総額7万円~(資本金額・従業員数によって異なる)を所得に有無にかからず支払うものです。資本金1千万以下の小規模企業(従業員50人以下)であれば7万円ですが、資本金1千万を超える(~1億まで)と18万円など
そこそこの税金はかかります。

 この休眠時に均等割りを納めるか否かは(私の知る限り)特に法令等に明記はないように思えますが特に請求はされないケースが多いように思えます。ただ、請求されたという話もほかの先生から聞いたことはあるので、もしかすると零細企業に対してはそこまで手が回らないだけの話かもしれません。

さて、それでは清算の場合どうでしょうか?

2.清算の場合

 通常は解散を行い、その後清算手続きをする過程では含み益のある資産の売却やオーナへの債務免除益でもない限り利益は出ず
法人税を納付することはありません。様々な解説書だとこういった含み益等の処理として繰越青色欠損金(特に期限切れのもの)が
話題になりますが、零細企業の場合はあまり関係がないです。

 たいてい自分の場合はもう事務所も引き払って休眠している会社などが清算手続きをするケースが多いです。さて、この場合細かいけど悩ましいのが前述の地方税の均等割りです。清算手続きといってもきちんと事務所があって従業員がいてある程度後処理とはいえ営業を継続しているようなケースはこれは地方税の趣旨として納税するのはある程度仕方がないと思われます。しかし零細企業で事業を止めて事務所も引き払って従業員もいないような法人が均等割りだけ税金納める?というのは感覚的になじまないです。

 実際に古いものですが判例もあります。(最高裁判所昭和62年4月21日判決)これは清算ではなく破産に対するものですが、要するにたとえ営業していなくても登記簿上の本店または営業所に存在しているとみるのが相当としており、要するに均等割りは払いなさいと言っています

 ただし、日弁連などもこれに対し、破産法人に関しては均等割りを免除または最低額にとどめるべきという意見書を出しています。これも事務所も従業員もいないのに登記簿に会社が乗っているだけで資本金に応じた均等割りを払うというのは理不尽だということです。

さて実務としてはどうでしょうか?

3.まちまちな地方自治体の取り扱い

 実はこれは地方自治体によってまちまち、清算手続きに入り事務所も従業員もなく実際に営業もおこ回れていないような状況になった
場合、申告書の地方税均等割りをの部分ゼロで提出しても何も言ってこない自治体と、そうでない自治体があります。前者の場合、まぁ請求してもどうせ払ってこないし、取り立てるのも面倒として黙認なのか、実体のなさそうな小さな法人は免除しているのかまではわかりません。後者の場合はだいたい前述の判例を持ち出して、均等割りを主張されます。

 ただ、判例はあるとはいっても一般的な感覚としてはおかしいと思ったのでしょうか。総務省が以下のような通達出しました。

 平成22年「地方税法の施行に関する取扱いについて」2章52号で法人の解散の際、均等割りについては「清算期間中に現存する事務所、事業所、寮等に限って納付するもの」としており、要するに清算で事業の実態もうがないような場合。にはについては均等割りを請求するなと伝えています

 ということで私の場合は、今のところ清算手続きに入って、営業もやっていなければ事務所の実態もないような状況の際には均等割りについてはゼロで申告しています。今のところ、判例を持ち出して課税しますと言ってきた自治体もありましたが、この通達を示して説明した後も請求してきた自治体はないです。当然悪用や濫用をしてはならないですが、やはり実態がないところに均等割りというのは感覚的に納得できないですよね