衝撃のeL TAX満足度評価
1.毎年の風物詩
税理士業界では、年が明けると法定調書や給与支払報告書、償却税の申告、そして確定申告へと入っていきます。そして冬の風物詩となっているのが地方税の申告・納税システムのeL TAXの不具合です。特に1月31日の給与支払報告書の提出、ぎりぎりに出そうとした方から、eL taxが遅い、動かないといった悲鳴が上がります。
ただ、税理士のそんな同業者を見る目はいわゆる朝「埼京線が遅れたので遅刻しました」という部下の言い訳を聞く上司の目でやや冷たいです。ちなみに埼京線は埼玉県と東京の湾岸部を結ぶ路線でとにかく混雑がひどいことで有名、そして朝はたいてい15分くらいは遅れるのでそれは見込んでおけということです。
一応給与報告書提出は地方税法317の6によって31日までの提出が義務付けられており同条317の7によって1年以下の懲役または50万円以下の罰則が虚偽記載および未提出者には課されます。ただし、故意に出さないということでもない限り罰則は適用されないようです。だからと言ってプロの税理士としては遅れて提出するわけにはいかないでしょう。
さて、eLtaxとは何かということですが、基本的には地方税関係の申告書を含む様々な書類を提出するためと納税のためのシステムです。要するにユーザーサイドにとって書面をいちいち郵送するのではなく電子的に送れるのは便利ですが一定のセキュリティを確保してもらえばあとは、最小限の入力とワンクリックで送付できれば良いという程度のものでしかないです。ただ、これがいろいろとトラブル続きでした。
2.eLTAXの黒歴史
そもそも同じような内容をなぜ税務署と地方税と両方、しかも前者は-tax後者はeL-taxの違うシステムに入って送付いしなければなりません。しかも、地方時は都道府県税事務所と市町村すべてに出さないといけません。ほぼ仕組みは一緒なのになぜ違うシステムが並立して別々に手続きしないといけないのか意味不明です。
そしてeL-taxは私の印象だと少しでも業務が集中すると不具合を起こしています。特に繰り返しになりますが1月31日の給与支払報告書提出の際は極端に遅くなる・動かないというのは一種の年明けの風物詩になっており、運営元の地方税共同機構も堂々とアクセスが集中するので末日はさけてくださいというオフピーク宣言をしてくれています(ただし、一応今年の31日は目立った障害はなかったようです)。
加えて、1~3月と月末を除けば土日はシステムが稼働していません。しかも朝8時半から稼働なので朝方の私としては困ります。単に電子データをやり取りするシステムでで24時間でないというのもなかなか使えないです。加えて、イメージ書類を添付するのもいったん本票を送付してから送付しなおすという不思議な仕様、忘れやすいし、かつよくシステムが落ちてうまくいかないことが多いです。その他、なんだか全角半角分けて入力など入力もやたらやりにくいし・・・ぶちぶち・・で不満たらたらです。
以前は操作するのにセキュリティに問題があるJAVAのダウングレード(アップグレードではなく)しないとだめ、インターネットエクスプローラー以外はエラーが出て動かないなど数々の黒歴史も積み重ねてきました。
こういった感じで、要するにたかが書類を電子で送るだけのシステムなのになので、こんなに使いにくいのと私は不満たらたら、周りも、もう仕方ないよとあきらめている人か怒っている人かどちらかしか税理士では見たことがないです。これに対し一応「利用者満足度調査」をやっているようで2月28日にその結果が発表され、これがある意味驚愕の結果でした。
3.驚愕の利用者満足度調査
https://www.eltax.lta.go.jp/news/07264
このアンケートeLTAXの運営主体である地方税共同機構がeL taxのホームページ上で約1か月間募っていたようです。あまり誰も見ないようなHPで募集というのもやる気を感じませんが、アンケートに答えた人数が991人というのもなかなか世の中の税理士だけで10万人程度いる中でしょぼいです。やはり税理士の関心が高いようで78%が税理士の回答でした。ただ、なんとこのeLTAX全体の利便性でなんと44%が満足またはやや満足であった点はあまりの高さに驚きでした。一方、やはり不満足とやや不満足はほぼ拮抗していて39%でした。私のイメージだと満足はどんなに良く見積もっても20%未満だと思っていたからその高さに驚いたのです。
ただ、細かく見ていくと特に受付時間については23%が満足なのに対し、不満足が46%、そしてPC DESKという地方税申告システムに対しては満足・やや満足が31%に対し不満足・やや不満足が44%とかなり不満が出ています。利用者の声では添付ファイルの容量が小さい。24時間対応にしてほしいなどという声が上がっています
全体的にこのアンケートでいえることは税理士感覚的には不満度の低さには驚きましたが、一般的なこういったシステムのアンケートでは衝撃的ともいえる満足度の低さと不満の多さでしょう。正直、民間のシステムでこんな満足度が低かったら相当な責任者は首となるレベルですが、所詮役所の仕組みですから平然としるようです。しかし、前年の調査で指摘された問題点の改善点がほとんど見えてこないというものすごいです。なぜここまで酷いのでしょうか?
このeLTAXの運営主体である地方税共同機構、予想の通り理事長は東京都の天下り、副理事長は総務省の天下りとすべて役員は天下りで占められている素敵な機関でした。役員にIT関係者は見当たりません。ここからは勝手な私の憶測ですが職員もほとんど役所の出向・天下り、ほぼベンダー言いなりでばっちりベンダーロックインされているでしょう。今ちまたで騒がれている「公金チューチュー」こっちの方が組織的で多分費やしてるお金も2桁ぐらい上ではるかに質が悪いと思います。ただ、これはもうがっつり利権化して相当河野デジタル相、相当頑張らないと廃止にはならんなというのが現実でしょうね。