インボイス制度私的モヤモヤポイントとは

目次

1.会計脳と税法脳

 いきなり唐突な話ですが、日本は確定決算主義、平たく言うと税金決算用と会計決算用と2つの決算書ではなく株主総会で決議されて確定した決算に基づいて税金を計算します。そしてこの計算は「税法に規定されている事項を除いて」一般に認められた適正な企業会計の原則に従っていればよいはずです。

 ただ、日本の場合実際には会計処理の部分は税法では規定されておらずそのあたりは政令・省令に委任、ひどいケースは役所内の通知事項である通達ではっきりするというケース多々あります。そして、自分の会計脳にはそれなりに「一般に認められた適正な企業会計の原則」があると思うのですが、なんとなくそれでしっくり行かない処理が税務会計の世界にはあります。

 税法脳的には税法・政令・省令あたりの整合性がとれていればいいのですが、会計脳と矛盾するとかなりもやもやします。これが今回のインボイス制度に伴う免税事業者相手の消費税の処理です。これって控除対象外消費税と処理と考え方、同じではないのと思うのですが違います。

 その前に控除対象外所得税をざっくり説明します。非課税売上に対する消費税、単純に考えると受け取っている消費税がゼロだからその売上に対応する仕入れで払った消費税全額還付となるのではと思います。しかし、それだと最終消費者が消費税を負担するという仕組みが崩れてしまいます。したがって、非課税売上げに対応する消費税は控除できない、これが控除対象外消費税で、消費税法第30条2項で定められています。

 控除対象外消費税に関しては経費として(租税公課)計上できますが、20万円以上の固定資産についての控除対象外約5年で償却これは所得税施行令第182条の2に定められています。こんな制度です。

2.インボイス制度の導入で免税事業者からの仕入

  インボイス制度が導入されると免税事業からの仕入にかかる消費税相当額は控除ができない、いわゆる控除対象外消費税的なものになるとおもわれます。ただし、導入後6年間は特例があり、80%、50%の仕入税額控除ができます。

 私は当初これは上記の控除対象外消費税に準じた処理をするものだと思っていました。ただ、免税事業者が請求するのは今後消費税「相当額」なので租税公課ではなく雑損になるのかなと最初は思っていました。

 しかし、これは違うようです。消費税経理通達14の2で消費税相当額は仕入金額に含めて表示と記載されています。法令の立て付けとしては仕入税額控除ができるのは改正消費税法30条で適格請求書を発行した取引になるため(法令139条の4⑤⑥)、免税事業者から仕入に伴う消費税相当分は控除対象外消費税の処理とは異なるという建付けです。これは法令の流れとして税法脳では理解ができます

 しかし、これ単なる仕訳の違いだけの話ではないです。仕入に含めて処理ということは販売されるまで棚卸資産になるので法人税の経費にならないし、固定資産ならばこの部分減価償却に応じて経費として処理されることになります。ようするに控除対象外消費税だとほぼすべて経費処理となるのですが、このインボイス制度導入に伴う控除対象外消費税相当額の一部の経費は繰延べられてしまうということです

 なんだかもやもやします。加えて他にもやもやポイントがあります

3.仕入に含まれるということ

 例えば1万1千円で免税事業者から仕入れていて以前は1万円本体、千円仮払消費税で処理していたもの令和5年10月から3年間は経過措置で80%仕入税額控除ができるので10,200円本体、800円は仮払消費税となります。

 これを10200円全額仕入で処理するということはこの仕訳が示しているのは単なる200円の値上げです。処理が本体10,000円、仮払消費税800円雑損200円でも経済実態的には一緒なのですがマニアックな会計脳的な話をすると仕訳の意味的に違います。

 あくまでも私の個人的な見解ですが仕入10,200円だとこれは仕訳の意味的には値上げです。一般的な仕入れだと売上原価率も上がるわけです。雑損だと単なる値上げではなく、それ以外の事情による損失という意味になると思います。

 仕入だと明示しているということは、極端な話、免税事業者の責による値上げだということです。
そして、国が仕入税額控除ができないということで消費税ではないということも明示しています。そうすると、相手の責による単なる値上げなのですからそれを拒否することには合理性があるのではと思います。要するにインボイス発行できないと事業者相手の事業は明らかに難しくなります

 あくまでもこれんも私見ですがインボイス制度の導入、免税事業者の益税つぶしというもは導入目的で全く明示されていませんが裏目的としてしっかりあるのだなとは思います。これ自体は個人的には公平性の観点からやむなしとは思いますがやり口としてもやもやするのです。