ニセ税理士とは?を考える
目次
1.税理士綱紀監察とは
私は、地元の税理士会で綱紀監察の役職についています。一体何をやっているのかというと税理士会員の品位保持の監督、税理士の違反行為への指導、にせ税理士問題への対策などをやっています。(注:このブログで記載されていることは綱紀監察の公式な見解ではなく私の個人的な見解であることを申し添えます)
ただし、正直税理士会員の監督・違反行為への指導という面は非常に弱いです。弁護士会の場合、違反行為に関しては業務の停止や禁止といった厳しい処分を科すことが可能ですが税理士会にはそういった強い権限がありません。士業として、しっかりとした自治を確立している弁護士はさすがと思うところです
実は残念なことがあり、地元の税理士が持続化補助金詐欺で逮捕されてしまい新聞などでも報道されてしまいました。実は、この税理士、詳細は申し上げられませんが、いろいろと問題が多く、目はつけていたのですが、呼び出しには応じず、事務所を訪問してもいつも留守の状況で連絡がつきませんでした。結局何もできないまま、犯罪行為にまで陥ってしまったということです。非常に無力感を感じる事件でした。
一方もう一つのにせ税理士対策です。そもそもにせ税理士とはどういった行為なのでしょうか
2.にせ税理士
簡単に言うと税理士でない者が税理士業務を行うことです。無料で親切に確定申告やってあげるのはいいだろうと思いきや一応法律的には無償でも違反ではあります。ではその税理士業務とは何かというと、これも簡単に言うと申告書の作成・提出・税務調査立合い、税務相談です。
ニセ税理士どんなケースが多いかというと主として2つのパターンです。税理士事務所の職員が副業でやってしまう、または事務所を辞めた時、または税理士の引退等で事務所がなくなった時、顧客に対して申告書作成をやってしまうケースです。
2つ目は記帳代行会社が行うケースです。記帳代行会社が行うのは普通会計帳簿の作成と決算処理までで、通常税理士事務所に頼むより、安価にやってくれます。そうするとそこまでやってくれるならついでに申告書まで作成してよというのは頼まれそうな話です。しかし、それをやってしまうと税理士法違反になります。
記帳代行会社が申告書自体は作成して、あとは申告書本人が提出というパターンとそれだとばれやすいということで税理士に頼んで名義貸しをしてもらい税理士が提出というパターンがあります。
税理士でない者が税理士業務を行うと、不測の被害を納税者が受けるからというのが国税庁・税理士会の主張です。たいてい全くの素人がやることは普通ないのでそうかなぁと思う部分はないわけではないですが、世の中のあるべき仕組みとして、これ自体には特に私も強い反論はありません。
しかし、気になるのは税務相談業務です
3.節税屋さんの暗躍
例えば以前、足場レンタルという節税手法がありました。何かというと建築現場の足場をレンタルする業を行うのです。なぜこれが節税というと建築足場は1つあたり10万円未満したがって一括償却できます。利益が出た年に一気に足場を購入すると利益を圧縮して節税となって、レンタル収入も入ってくるので2重にお得みたいな話でした
でもこれは正確に言うと節税ではなく、課税の先延ばしにすぎません。もしレンタル収入の総額<足場の購入金額であれば払っている税金総額は少ないですが単にお金使って損しているだけです。逆にレンタル収入の総額>足場の購入金額であれば利益が出ているわけですから払う税金の総額は多くなるはずです。
要するに税金支払いの先延ばしにすぎず、実は一番お得なのは自己資金ゼロでさやが抜ける間に入っている業者ということになります。当然国税も目をつけていてレンタル事業(専業としてやっている場合を除く)として10万円未満の少額資産を購入した場合の一括償却は令和4年度の税制改正で認められなくなりました。典型的ないたちごっことは思います。
基本的に私はこういった目先の税金減らすだけのためにお金の支出を伴う、不自然なスキームを組むことはお勧めしていません。不測の事態が生じたときに一気に会社が傾く要因になりかねないし
こんなことに経営者の貴重な時間をつかっていただきたくないからです
一度こういった節税屋さんの節税提案は「税務相談」にあたらないの、特に個別に営業に来てシミュレーションとか組んで説明するのは税理士法上の「税務相談」にあたらないのということを税務署の方にお聞きしたことがあります。一般的には小物であるにせ税理士の行為などよりよほど社会的な負の影響は大きい気がします。相続対策などのスキームなどは不動産会社と金融機関がタッグになって堂々とやっています。税理士にとってもどんどん税制改正で税法が無駄に複雑(消費税の高額特定資産の取り扱いとか)になり本当に勘弁してほしいです
税務署の方々の反応は、一般的な紹介と個別具体的な税務相談の線引きが難しいということでした。少なくともあまり現場サイドでは興味がないということのようです。なんとなく無力感を感じてしまうといったところです。