船井電機の不適正会計と内部監査

FUNAI

船井電機が米国子会社とメキシコ子会社で不正会計があったと報告し、決算発表を延期することとなりました。影響額は現状で16億円程度であり年間1681億円の売上のあるこの会社では巨額というわけではありませんが、経常利益が小幅黒字と赤字のあたりを行き来するこの会社では軽微とは言い切れないかもしれません。プレスリリースをみると第一四半期の「決算作業の過程において」と記されています。収益・費用を操作した場合会計上不自然なの資産計上や負債未計上といった形をとりますからそこから判明したのではないかと想像します。

いつも思うのですが日本の海外子会社の不正においてたいてい判明するのは内部告発や監査法人の指摘、決算作業の過程などであり、あまり内部監査によって発見されたという話を聞きません。一般的な日本企業と欧米系グローバル企業を比べて大きく違うのは内部監査室の状況です。欧米系グローバル企業だと内部監査は上級幹部候補のための登竜門であるケースが多いです。内部監査部門のトップは将来のCFO候補であることが多く、スタッフも各部門の精鋭を集めて2~3年くらいの任期で内部監査人として世界中を巡ります。将来の上級幹部候補はこの内部監査でリスク管理を学び建設的な提言を求められます。監査でありがちな印鑑(サイン)が抜けているといった枝葉末節な話ではなく、リスクを見定めそのリスクがきちんとコントロールされているかを検証し、コントロールに問題がある場合は報告・提言が求められます。対応する現場側としては相手側も必死に実績を作ろうとやってくるので非常に鬱陶しい存在です。私も無理に実績を作ろうとした米国本社の内部監査スタッフと大ゲンカをしたこともありました(ある意味全社で有名人になってしまいましたが・・・)。しかし、一方でこのような牽制体制の重要性は実感しましたし、必死に挑戦してくる若いスタッフに鬱陶しいと思う一方で敬意を感じていました。

日本企業の場合は内部監査室というと一線の競争から少し外れてしまった人たちが行く場所、多少重要性がわかっている企業でも専門職的に公認会計士や公認内部監査人(民間資格)などの資格取得者を設置する程度だと思います。前者はともかく後者の場合でも社内の仕組みを知悉した優秀な人間との組み合わせではないと、やれることに限界はあると思います。是非、日本企業特に海外に進出しているグローバル企業は中小企業であっても上級幹部候補育成とリスクコントロールの両面からもう少し内部監査室の役割を見直してもよいのではないかと思います。私も何社か内部監査室の改善方策をご提案したことはあるのですがまだ、実施に至った例はなくて残念です(笑)。

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