監査の期待ギャップ

帳簿

日経で「わかる監査」が連載され始めました。今回の始まりは期待ギャップの説明から比較的やわらかめに始まった感があります。一般の方々の認識としては「監査で不正が見つかるはず」と思っていますが、実際の監査の目的は「保証」です。会計士協会のWebサイトでは以下のように述べています。「何を保証するのかというと、企業が作成する財務諸表が会計の基準に準拠して正しく表示され、なおかつ重要な虚偽の記載がされていないということについてである」ただ、今回問題になっているのは東芝の不正を摘発しなかったことよりも財務諸表に虚偽の記載があってそれを発見できなかったことにあります。

ただし、不正については現在金商法193条の3「法令違反等事実に対する通知」を監査役等に書面で行わなければならないと定めています。以前この条項が話題になったオリンパスの事例では担当監査法人がこの条項の発動を示唆してその結果不正が表に出たという経緯がありますが、東芝の件ではそのような話は聞きません。もし、東芝の件で監査法人の責任がないとすれば会社ぐるみの不正で巧妙に隠蔽されていて監査法人がわからなかったということだと思います。

ただ、外部的にみると工事進行基準の評価や部品売上の不正計上など非常に通常の監査手続きの中でリスクの高いとされている分野で「しかるべき監査手続きがとれない」のは疑問が残ります。また、あまり新聞等では話題になっていませんが、各部門の数字に関しては部門長の独断で操作が可能であったという内部統制上大きく問題があり、それが内部統制の監査でなぜ発見できなかったかもかなり疑問です。品質管理がしっかりしていると思われている大手監査法人で生じたことですから、監査調書などで原因究明はしっかり行ってほしいと思います。個人的には責任追及よりも今後の改善につながるような動きにつながると嬉しいと思います。