三菱重工と日立の合弁会社の争いの根本原因

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三菱重工は31日に「南アフリカの火力発電所事業における損失負担に関する日立製作所への請求を巡り、同日付で日立を被申立人として約7743億円(約908億・南アフリカランド)の支払い義務の履行を求める仲裁申し立てを行った」(以上ロイター記事)と発表しました。両社で昨年3月末くらいから協議を重ねてきましたが解決に至らず、日本商事仲裁協会に仲裁を申し立てたものです。

様々な記事によれば、日立と三菱重工の火力発電の統合ですが形としては日立の事業を三菱重工が査定して買収した形での統合でした。そして、南アフリカ事業について統合前の損失は日立、統合後は合弁会社が責任を持つことを前提に暫定価格で譲渡したものです。最初は3790億の請求でしたが、今年の2月に三菱重工が再査定をして、7634億円の請求になりました。

よく日本企業であるのがM&Aを行おうとして交渉に入ったものの撤退すると「失敗」とみなされることです。しかし、本来は「買うか」「買わないか」の判断で「買わない」の判断だけをしただけですから経済性に合わなければ撤退するのは当然で、経営判断で失敗などではありません。経済誌などによるとこのプロジェクトは宮永三菱重工社長が担当役員として主導した案件だったようです。そういった意味でも統合ありきで急ぎすぎたという面があるかもしれません

私のGE時代の経験ですが、GEの買収の責任者は悪鬼のように少しでもリスクがあるとみると私でも無理難題と思われるような要求をどんどん相手方に投げて、リスクを押し付けていきます。相手も最初は怒り、担当者がなだめ役をつとめることとなります。しかし、ぎりぎりの緊迫した交渉の中で相手も疲れと慣れでだんだんと妥協してきます。私もなだめ役をやっていたほうなので当時は爆弾ばかり投げて迷惑な上役だと思っていたのですが、のちのち振り返ると彼のおかげでほとんど失敗のディールがないことに気づきました。日本企業は特に買収交渉においては紳士だけでなくこのような「悪鬼」が必要だと痛感しています。

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