産業医の権限強化は役立つか?

産業医

日曜日の日本経済新聞に産業医の権限強化の記事が載っていました。その内容は、企業は産業医との情報共有を促し、就業時間の削減などを講じた手立を報告させ、産業医は対策を講じない企業には説明責任を果たすよう求めるといったものです。加えて企業が産業医との契約を打ち切る時は理由を労働組合に知らせ、簡単に契約を解除出来ないようにして産業医の権限強化を図るというものです。進んだ大企業だと産業医と連携して、従業員の健康管理に積極的に取り組み効果を挙げているケースもあるようです。従業員の健康管理はどの企業にとっても非常に大切な問題で産業医を活かすというのは大切なことのように感じますが、そもそも産業医という制度は本当に従業員の健康管理に役立っているのでしょうか?

中小企業などにとっては産業医は無駄なコストのように感じている経営者が少なくありません。法令では従業員50人以上の事業所には産業医設置義務付けとなっていますがどれだけきちんと守られているのでしょうか?私もある中小企業の経営者と話をしていて従業員は48人だけれども50人になると産業医など「無駄なコスト」がかかるので困ると話されていたのが印象が残っています。こういった方は従業員の健康管理に気を配らないダメな経営者なのでしょうか?私も会社員だったころ確か産業医の先生が来社されていましたが、恥ずかしながらイメージとしては月一回、数時間健康相談に来て総務課長とお茶飲んで帰る方というだけで利用したこともありませんでした。別に健康に気になるのでしたら昼休み前後にでも近所のクリニックに行けば十分です。私自身少なくとも都会の事務職にはあまり役に立つ制度と思ったことはありません。

そもそも産業医というのはどんな資格かと思い、日本医師会が出している「認定産業医の手引き」に目を通してみました。すると産業医として認定されるためには50時間以上の研修、5年間の20時間以上の継続研修が必要だそうです。もともと医師という高度な専門職だからという点はありますが、ざっくり1週間の研修とその後は1年間に半日程度の研修で取れてしまう程度の資格というのは驚きです。そしてその内容も手引きによれば基礎研修でメンタルヘルスに係るものは1時間しかありません。メンタルヘルスの健康管理というのはそんなに簡単なものなのでしょうか?一方、作業管理、作業環境管理、有害業務管理が基礎研修では2時間ずつあり、基本的に内容は製造業の工場の健康管理に偏っている感が強いです。

まとめると、「認定産業医」という資格が工業社会には適合していて、確かに工場などの衛生管理や安全管理には大きな貢献をしてきたかもしれませんが、現代のホワイトカラーのメンタルヘルスなどが主体となった健康管理には適合していない気がします。心療内科、精神科専門医だけでは足りるとは思えないので、産業医的な制度を「臨床心理士」や「公認心理士」などの資格者にも門戸を開く方が効果的ではないでしょうか? 厚労省が決めることなので医師会に「忖度」した制度を温存する可能性の方が高いとは思いますが・・・

お問い合わせは↓まで

https://ta-manage.com/form/