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会計

監査改革で欠けているもの

2017.06.28

azusa

最近若手の会計士から将来の不安について悩みを打ち明けられることがしばしばあります。いつでも将来の不安というのはあるものですがその質は変わってきたような気がします。我々のころは将来が全く分からないという漠然とした不安でしたが、今の若手は閉塞感を伴う不安です。私が働いていた1990年代、外資系事務所ということもありましたが見回すときわめて当時の同僚の現在はバラエティに富んでいます。当然そのまま監査法人に残る、または他の監査法人に移って監査の業務を継続しているケースもありますがそれは約2割、会計事務所を開いていわゆる税理士業務を行っているケースが2割、しかしあと6割は投資銀行、ファンド、大学教授、弁護士、様々な経営コンサル、事業会社経営(IT系が多い)および経営陣といった感じです。理由は当時は監査業務中心の経営コンサル会社といった性質があったからかもしれません。仕事自体は基本的に上層部から割り当てらるものですが、やりたいプロジェクトなどは手を挙げた人間が割り当てられる確率は高くなります。別に上層部はスタッフのキャリアパスなどおそらくほとんど考えていなかったと思いますが、皆自分で自分のキャリアパスを考えて仕事をやっていく環境がありました。好意に解釈すると上層部はキャリアパスをスタッフ自身が考える環境を与えてくれていたと言えます。そういった環境だとみな独立意識が強く、別に上司の言うままになることはありません。監査などでも会計処理や監査手法などをめぐって上司と侃々諤々の議論をすることもよくありました。

一方、現在は監査法人は「監査業務」だけを行う専業の企業になりました。「監査」という業務自体は企業経営をする上で役に立つ視点だと私は思いますが、それだけでは企業経営は全くできません。また逆に監査業務は公認会計士の独占業務なので大きな組織は監査法人でないと物理的に制度的に監査はできません。「監査業務専業」自体は顧客企業とのなれ合いを防ぐなど、理由はきちんとあること仕方のないことかもしれません。しかし、上層部の「スタッフのキャリアパスを考えない」という姿勢が環境が変わっても以前と変わらないのはどうなのでしょうか?組織なので上層部に行くほど狭くなっていくピラミッド型なのは仕方がありませんが、ここから漏れていく大多数のスタッフたちの処遇はどのようにしようと考えているのでしょうか?

実はアメリカで先例があります。アメリカは大手監査法人は戦略コンサルテイング会社、投資銀行と並ぶ優秀な大学生に人気の職場です。ただし、アメリカ人に聞くと3年長くて5年以上監査法人にいると(監査しかやっていないので)他の職業では使い物にならなくなるので監査を一生の職業にしたい人間以外の大多数が辞めて、MBAを取得したり様々な職業に転職したりしていきます。確かにアメリカで働いているころ元ビッグ4会計事務所(当時はビッグ6でした)のスタッフは財務・経営企画部門に幹部候補生として多数いました。いわゆるキャリアを切り開く入り口として最適とみられているわけです。一方、日本のいまだに硬直した雇用環境の中でアメリカの制度だけ(監査法人は監査専業)つまみ喰いしてもうまくいきません。アメリカ企業だとビッグ4出身者で事業会社に入ると幹部候補生で日本の会社でいうと課長一歩手前くらいの処遇で入りますが、日本の一般的な企業ですと入社3~5年目の社員と全く一緒(せいぜい資格手当+1~2万くらい)で完全な平社員でしょう。こういったことで全く魅力のあるものではありません。

せめて監査法人はグループの様々なコンサル会社や税務部門などと連携して多様なキャリアパスを用意するくらいのことは考えても良いのではないでしょうか?公認会計士は一般的には監査法人を経ないと資格がほぼ取れないので、監査法人が魅力のある働き場所にならないと公認会計士自体が魅力のある仕事になりません。現状だと他に行くところがないので上層部の顔色をうかがうサラリーマン集団になってしまい、「監査人の独立性」などは絵空事になります。こういったことが若手会計士の閉塞感になっていると思います。特に日本企業においてガバナンスを無力化する大きな要因に「上層部の顔色をうかがうサラリーマン化」が根底にあると思います。この根本的部分にメスを入れずして「監査改革」などを金融庁などが上から押し付けても「書類仕事」が増えるだけだと思うのは私だけでしょうか?

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