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会計・税務

事業の代替わりはうまくいくか?

2017.11.22

 

町工場

事業承継、いわゆる会社の親から子供の代替わりが、なかなかうまくいかず廃業する会社が増えています。今開業率は3.5%程度なのに対し廃業率は6.3%と上回っており、どんどん企業の数が減少しています。健全な新陳代謝ならば良いのすが、素晴らしい技術を持った企業が後継者がいないため廃業する例も多いとききます。その中でやはり相続税等の問題も一部その原因と考えられているようです。簡単に言うと代替わりと言うことは親の所有する株式が子供に相続等で移転するわけですが、その株式自体はどこか外部に売却できるものでもないのに税務当局が決めた計算方式で価額をつけられて多額の相続税等を納めなければならないことがあります。

それを改善しようと事業承継税制というものが創設されたのですが、私は恐ろしくてよほどでないと顧客には勧められないものになっています。そもそもあくまでも「猶予」であって取消要件に引っかかれば猶予取消で納税しなくてはなりません。主な取消要件は5年間以内に従業員数8割未満、社長は5年間以内に辞職、5年以内対象株式の売却、5年間経産局・税務当局への毎年の報告を怠るなどがあります。この流れの速い時代相続後5年もたてば事業が傾くこともあり、従業員を減らしてリストラすると猶予された相続税を支払わねばならないという恐ろしいことになります。また、経産局・税務当局への毎年の報告を怠ると猶予取消になるというのも税理士としては(プロとして当然気を付けるべきと言われても)おっかなくて仕方がありません。しかもこれだけリスクを負っても実質的な負担は約半分に減るだけです。

さすが政府もまずいと思ったのか見直しを考えているようです。この中で従業員数の維持の要件ははずし、猶予額も8割程度まで引きあげるようです。ただ、これも「雇用計画など一定の条件をつけて・・・」などとあるのが曲者で、私はかなり面倒な書類や報告義務などが課せられるのではないかと憂慮しています。確かに制度が変わるとそれを利用して税逃れ的な仕組みを考える人間が出てきます。ある程度それを防止するため手立てをするのは必要だと思いますが、そのために本来の意図である円滑な事業承継が出来ないようでは本末転倒です。そのあたりは税務当局は抜け道を事前に塞ぐように複雑な仕組みにするのではなく、アンテナを張って税逃れ的な手段には素早く手当するような対応をしてほしいと思います。

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配偶者控除は本当に必要? -制度変更について

2017.11.08

 

working lady

来年から配偶者控除の制度が変わります。特に源泉徴収の事務をやられている方は様々な煩雑な事項がありますが、普通の給与を受け取っている方々はザックリと3つの点(+1の追加事項)を認識しておけば良いのではないかと思われます。

1)合計所得金額1000万超(年収 1220万円超)の方について、配偶者控除は受けられなくなります.

2)配偶者控除の対象者の合計所得金額は38万円以下(年収103万以下)から85万円以下(年収150万円以下)とかなり範囲が広くなりました

3)2)に応じて配偶者特別控除(控除額は所得が増えるに従って徐々に低減していく仕組み)は合計所得123万円以下(年収201万円以下)まで適用されることとなりました

プラス1の追加事項として、合計所得900万超~1000万以下は50万円刻みで2)3)の控除額が約3分の1ずつ減らされます。

この変更の意図としては、配偶者特に女性について配偶者控除がなくなることを恐れて働くことをやめてしまう103万円の壁をなくす、一方で高額所得者層には配偶者控除をなくし増税をするということでしょう。しかし、当然バリバリフルタイムで働く共働きの女性には全く恩恵はないです。通常フルタイムで働けば一般的には年収200万円は超えると思われるのでパート女性優遇でしかありません。また、年収1200万円あたりで「高所得者」とみなされ、いきなり増税というのはやや違和感があります。生活の面でいうと子供を2人私立の中高一貫などに入れ、住宅ローンなどがあるとこの層だとかなり生活は厳しくなります。確かに「庶民感覚」的には高所得者かもしれません。しかし、ちょうど私の同級生くらいの年齢(50代前半)で一流企業などにいる方はこのくらいの年収が多いと思われますが、今後は役職定年などで大幅カットが見えている方も多々いる中で富裕層的にみなされるのは厳しいのではと思います。

そういった意味でなんだか中途半端で誰の役に立っている制度変更なのかしら・・と個人的には疑問に思います。いっそ「配偶者控除なんてなくしてしまえ!」と思うのは私だけでしょうか?

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ビットコインの課税で思うこと

2017.10.09

bittokoinn

先日ビットコインに関する国税庁の見解が出ました。そのまま引用すると「ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。」です。7月よりビットコインに消費税がかからなくなり、今回雑所得になりある程度課税関係は明確になったと思います。

「雑所得」とは何かですが所得税法35条に記載がありますが要するにどの所得区分にも属さない「雑多なその他」です。ただ、ビットコインの損失は他の雑所得とは損益を通算できますが(要するにビットコインの利益をほかの雑所得の損失と相殺できる)、会社員の給与所得や自営業の事業所得などほかの所得と損失の通算はできません。しかも、ビットコインで利益が出た場合、例えば会社員は給与所得と合算されて累進課税(住民税を入れると最高55%の税率+復興所得税)が課されます。しかも損失は繰越ができないですからある年ビットコインで大きな損失をだし、翌年少しだけ利益が出たとしても翌年の利益にだけしっかり税金がかかります。

投資感覚でやっている方々に似ものとしてはFX(外国為替証拠金取引)があります。しかし、これも雑所得ですが「先物取引にかかる雑所得」として申告分離課(住民税込で20.42%)で3年間の損失繰越が認められます。「先物取引にかかる雑所得」なので他の雑所得とは損益通算ができないデメリットはありますが、損失繰越ができることは大きなメリットです。単純な例だと100万円前年に損失が出ていれば今年100万円利益が出ていても相殺されて税金を払う必要がありません。また、申告分離課税なのでどんなに利益が莫大でもこの利益に20.42%の税率で計算してそれで税金関係は終わりです。

私は別に投機を進めるわけではないですがビットコインの課税関係FXレベルにはしてほしいものだと思います。業界の方頑張ってください。

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起業家と目先のお金の話

2017.09.13

kigyou

コンサルティングは法人設立しましたので先日決算を終了し、申告書作成しました。幸い初年度から黒字でしたので後は納税だけの状態となりました。個人事業の所得税の場合士業ですと源泉徴収で10%(100万円を超えると20%)+復興所得税を徴収されているのであまり納税がないか、または還付となるのですが、法人税は赤字でもない限り納税となるので確かに痛税感は強いです。そういった意味では源泉徴収といった形でさりげなく税金が天引きされる仕組みはよくできたものだと思います。個人事業主で還付と言ってもただ単にもともと天引きされていた源泉徴収分が戻ってきたにすぎないのですが、何だか得した気分になるのは不思議です。

朝三暮四という言葉があります。「中国、宋の狙公(そこう)が、飼っている猿にトチの実を与えるのに、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという」故事(デジタル大辞泉より引用)から来ています。人間は目先のことに気を取られやすいという意味ですが、まさに源泉徴収の還付などはそんな感じです。

その点消費税などは原則預かったものを払うだけなのですが非常に痛税感を感じる典型です。中小の事業者はたいてい税込処理なので感覚的には受け取った消費税分はもらった気分になってしまいます。しかし、期末に払った分との差額を払う(というよりも実際は戻す)だけなのに非常に損した気分満載です。私も会社員だったころ中小企業が消費税の納税の滞納をしてしまうと聞いて愚かなことだと思っていましたが、自分が同じ立場に立ってみるとよく気持ちがわかります。人間本当に目先のことに気を取られてしまうものです。

そういった意味で起業してしばらくたって納税が生じ始めた方に早めに法人税や消費税の納税の仕組みを肌感覚でわかってもらうように(頭ではある程度わかっていると思うので)お話しするのは大切なことだと思います。起業して売上が年1千万を超えたり法人で黒字決算は事業としてはめでたいことなのですがその一方で税金はかかってきます。早めに税額の予測などをお伝えして慣れていただくのは大切だと思っています。たまに節税と称して無駄に経費を使ってしまう方がいますが、例えば10万円経費使って税率30%と仮定して3万円税金得をしたと思っていてもお金は10万-3万=7万減っています。「無駄な経費」だった場合は7万損しただけです。これも節税という目先にとらわれていたということです。

起業されて業歴が浅い方は特に目先のことに気を取られやすいものです。税金なども気を取られやすい一つです。あまり無頓着なのも困りますがまともな税理士がついていればさほど税金の額はこのステージであれば変わりません。是非事業を中長期的に成長させることに気を配ってほしいものです。自分のビジネスモデルをきちんと考えていくのもその一つだと思いますのでもしご興味があれば以下起業ビジネスアイディア発想法講座のぞいてみてください。今回は「起業のバイブル」発刊1周年記念で、著者である中山匡氏とのジョイントでおこないます。中山氏からのプレゼントも多数ありますので是非ご参加ください。

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中小企業のオッチャン的に今の日本の政治を考える

2017.07.26

kokkau

今朝の新聞を見ると一番大きな扱いは加計問題で安倍首相がいつ学校法人「加計学園」の獣医学部創設でいつその情報を安倍首相が知ったかについてのことについてです。その一方で社会保障費は17年度「5000億円の増加に抑えた」、介護保険料はまた値上げされて年収841万円の大企業のサラリーマンであれば月5668円も支出が増えるということで実は消費税2%値上げよりもインパクト多そうなのですが全然騒ぎにならないのは不思議です。この中でプライマリーバランス(基礎収支)赤字を20年までになくすという案は消えつつあります。このような状況であまりにも国の財政は桁が大きくイメージがわかないので中小企業のオッチャン的に考えてみました。

ざっくりいうと今年は売上収入5000万円ですが営業支出は7000万円かかっていて2000万円の赤字です。これだけでも真っ青ですが借金は10億円あって毎年1300万の元本返済と1000万円の利払いがあります。ふつうこのような2000万+1300万+1000万=4300万分の不足はやりくりできないのですが日銀という優しいメインバンクを中心として支えてくれています。この仕組みが破綻すると負担するのは国民という株主たちなのですがあまり気にしません。このようなつぶれないのが不思議なくらいの中小企業がポーンと1万円社長の友人の得体のしれない団体に寄付しました。寄付に関与して社員は「社長の天の声」があったと言っていますが社長は「そんなこと言っていない」と言った言わないの議論が続いています。なんでつぶれそうな会社の社長が1万円も寄付するんだと怒るのは全く分からないわけではありませんが、毎年2000万の赤字と10億円の借金の方が株主としては気にかかります。1万円の寄付の話で数か月も議論するならば借金をどうやって返すんだという話の方が大事なような気がします。傲慢に聞こえるかもしれませんがオッチャンの立場的にいうと「そんな細かいこと覚えていねえよ」と言いたくはなります。結構業績が悪くつぶれそうな会社に限ってどうでもいいことでもめて時間がかかっていたりしますが、これも典型的な例だと思われます。

国民的には知り合いによくわからない寄付をして、かつ開き直られてムカツキはすると思うのですが、一方で「いつまでもそんなこと議論するなよ」というところもありそのあたり自民党と民主党が単に刺し違えているだけのように思われてなりません。結局究極的には「言った言わない」の話ですから解明は絶対されないことはわかっています。だれか力のある超党派の議員さんが「もう止めよう」と言ってくれないですかね。

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有休取得率を高めるには

2017.07.19

 

経団連で会員企業に対し働き方改革として様々な数値目標を各社に定めてもらうことにするようです。その中で4連休の休日取得率なども含まれています。経団連が決められることではないですが、有価証券報告書の従業員の状況に社員の有休休暇取得率を載せればもう少し真剣になると思いますが・・・。日本企業の有休取得率は国際的に低いと叫ばれ続けて結構久しいものがあります。その一つとして、有休休暇は経営陣が当然に想定しておかなければならないコストであると認識してもらう必要があります。

少し話題が変わりますが、私は国際的な企業から日本の会計基準で作成した財務諸表からIFRS(国際会計基準)対応になるために修正を入れるよう依頼されることがあります。代表的なものが有給休暇引当金です。かなり日本基準はIFRSに近づいているのですが、のれんの償却と並んで変更がされない項目の1つです。多少乱暴目に簡単にいうと未消化の有給休暇残高日数分の給与合計を負債として認識するものです。考え方としては給料を払っても休みを取って働かない日があるのですからその分他の人で埋めなければなりません。その部分は負債として見込んでおこうというものです。そもそも有給休暇部分を会社の負債と経営陣がきちんと見込まないのですから理論的に有給休暇取得は増えません。ただし、引当の計算で有休の取得率が実績として低いと負債の額は低くなります。これが導入されると財務諸表を見て有給休暇引当金が平均給与水準と社員数から見て低いと有給休暇取得率が低いことが財務諸表を見ただけでざっくりですがわかってしまうわけで、このあたりが日本企業が「日本の労働慣行になじまない」と反対している理由かもしれません。そもそも「その労働慣行」を変えようとしているのにここで反対するというということは本当は変える気がないと思われても仕方ありません

欧米企業で有給休暇取得率が高い理由の一つに社長や役員クラスがきちんと休みを取ることがあります。私が以前いたGEはワーカホリック(仕事中毒)のスパルタ企業として米国でも有名でしたが私のいた消費者向け金融部門の社長は1か月、上級副社長(事業部長クラス)は3週間、副社長(部長クラス)で2週間、マネジャー(課長)クラスで1週間と偉い順に休みを多くとっていました。(万年)平社員は2~3週間と長くとる人も多いですが、冗談ですが上から4週間→3週間→2週間→1週間ですから当時マネジャーだった私の部下にたいして「この算式だと君たちの有休はゼロだね」と言っていました。しかし実際、上を目指す平社員の若手はほとんど有休ゼロで必死に休みなく働き、マネージャークラスになると多少休めるようになります。このあたりは格差社会の米国らしいです。ただ、この仕組みだと偉い人がいないわけですから、それ以下の人は非常に休みやすいわけです。偉い人がきちんと休めば全体的な有休取得率は高くなると思います。有給取得を増やそうと言っている経営陣自体が休まずにいたら誰も信じません。本来偉い人は自分がいなくても日常的な業務は動くように設計するのが仕事なはずですから・・。

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電子申告・納税が本当にしやすくなる?

2017.07.17

申告

日曜日に電子申告・納税がしやすくなるという記事が日本経済新聞に載っていました。記事によると現在の電子申告の割合は所得税で52%、個人事業主の消費税で59%だそうです。ただし、諸外国に比べると普及が遅れており理由としてカードリーダーという器具の購入と住基カードなどのカードをそこに差し込んでやらなければいけないことが挙げられています。今回税務署に電子申告の届出書とともに本人が出頭して対面で本人確認を行えばその場でIDとパスワードを渡してそれで申告ができる制度が設けられるそうです。

過去のことを掘り起こせばそもそも、このような手続きができるならば、そもそもなぜ以前のような住基カードを入手した上、カードリーダーを購入しなければならないような面倒な仕組みを導入したのか非常に不思議です。あくまでも想像ですが全く普及しない住基カードの普及のためにこのような利用者の利便を考慮しないような仕組みができたのではないでしょうか。

もう一つの疑問はそもそもマイナンバーはそもそも「なりすまし」をなくすために作成されたのであって、マイナンバーがあるのにまた、税務署に出頭して「なりすまし」でないかの確認がなぜ必要なのかよくわかりません。いわゆる「屋上屋を重ねる」です。行政関係の手続きはマイナンバー一つですべて完了するといったうたい文句だったはずです。

そして、この措置は3年くらいで、また制度が変わるというのが最後の疑問です。わざわざ税務署に出頭して本人確認をしても3年後にはまた違った手続きで行うようです。どうせ変わるのでしたら私だったらまず面倒でそのようなことは行いません。残念ながらこの仕組みはあまり普及しなさそうです。

税務当局も電子申告・納税を普及させようと努力をしているようですが、すべてやることが中途半端でうまくいっていないような気がします。セキュリティ対策の意味もあるのだとは思いますがいまだにFAX、電話文化ですし何とかしてほしいお役所の一つと思います。

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監査厳格化で品質は向上したか?

2017.07.07

kannsa

「揺れる監査法人」という連載記事が今日本経済新聞で行われています。現在の「監査厳格化」での様々な問題点を取り上げている記事です。私はブログでは現在の「監査厳格化」という流れに対し批判的ですが、特に当初は一定の効果はあったと思っています。以前は大手監査法人といっても中小の監査事務所の集まりといった感じで、各部署にドンのような偉い先生がいてやり方、品質がバラバラだった気がします。

私は外資系の大手事務所だったのでかなり厳しく指導された記憶があります。新人のころは監査調書という監査記録も上司がしっかりチェックをして、きっちりと監査手続きをしたという心証ができるまで何度も書き直しをさせられました。そのためお客様に再度追加資料お願いして、深夜まで調書を事務所に戻って書き直して上司に再チェックをお願いしたことを覚えています。一方国内系の某監査法人と共同で監査を行った際などはほとんど調書などは作成しないことに驚きました。簡単にいうと結論は担当の大先生が会社の方と話をして重要な会計処理を相談して、そこでほとんど決まってしまいます。したがって、現場は大先生から指示された部分をチェックしてそれで終わりだったからです。この「部屋制度」というような大先生が自分の顧問先を独占して他部署は一切口を挟まないような仕組みはほぼ完全に姿を消しました。しかし、会社と大先生の結びつきは悪くいうと癒着だったかもしれませんが、よくいうとほぼ「会社側の一員」に近く密接なつながりがあったので、会社側も腹を割って話をしてくれ、意外に不正などは少なかった気がします。

その蜜月に終止符をうったのが、カネボウ事件で「会社の一員」として粉飾を止める立場にあった会計士が逆に隠蔽に協力するという事態が起きました。信頼関係による制御は時代に合わなくなってきたのは仕方のないことだと思います。監査調書などもきちんと記載し、他のチームや本部がチェックするような相互けん制の仕組みができたのは全体としては品質のばらつきをなくし、高めたという意味では監査厳格の流れは一定の効果があったことは確かです

しかし、今は厳格化が単なる本部の中央集権化とマイクロコントロールになって形式主義化が目立ってきた気がします。サンプルが多くないので確かな情報ではないのですが、監査の品質が上がった印象はあるかと企業側の人たちと話をしてみると肯定的な答えは多くありませんでした。監査スタッフはとにかくやたらと資料を多く要求して後は部屋にこもって何をしているかわからない、パートナー(代表社員)は顧客のビジネスについてほとんど理解していないし、社長や役員との会議でも質問はマニュアルに書いてあるような定型的な同じような質問を毎年繰り返すばかりで時間の無駄だと思う、パートナーに会計処理の質問をしても本部に聞くというばかりでまともに答えられない・・など少なくともここ10年くらいはむしろ低下といっても良いのではないかという意見が多かったです

要するに上から下までマニュアルをこなして本部の品質管理部門に出す資料の作成に汲々として自分の頭で考えることがない姿が浮かび上がります。そのためマニュアルでカバーできない、本部などで評価できない部分などはおろそかになってきます。特に思うのは全般的リスクの部分で東芝のような巨大企業の場合やたらとチェックの数を増やしても不正の防止は無理で、様々な会社の中の方々とじっくり話をして会社のビジネスを理解してどこにその企業固有のリスクがあるかまずじっくり考えることが必要です。マニュアルは一般的にリスクが高い部分は細かく言及していますがその企業固有のリスクについては言及できません。本部の品質管理やその先の金融庁への対応が真っ先に合って、顧客の目線が不足するとこのような企業固有のリスクはまず発見できないでしょう。私は中央集権的な本部によるマイクロコントロールよりも現場に判断をゆだねる分権化にすこし針を向ける方が監査の厳格化と、品質管理の向上には資すると思います。いかがでしょうか?

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マイナンバーはどこに行った? 

2017.07.05

mainanba-

最近新聞や雑誌でもぱったりマイナンバーについて聞くことがなくなりました。これは、一般誌だけではなく税務通信のような専門誌でも同様です。昨日何人かの税理士で飲んでいたのでチラリと話題になりました。驚くことに半分がマイナンバーカードの取得さえやっていません。一応私は税理士だし税務行政に協力という意味で面倒だと思いながら取得してきました。しかし、平気で平日の昼間に取りに来いと指定されるし、私のような自営はまだいいでしょうが、サラリーマンの方の中には有休をとって行かれた方もいるようです。このような面倒なことをやっても使ったのは印鑑証明の取得くらいですが、これも単に印鑑カードがつかえなくなるので仕方なくという感じで別に私にとっては使うカードが変わっただけで何のメリットもありません。行政は始めるのは遅いけど自分が面倒なことを止めるのはやたらと早いのはある意味感心します。

いろいろな行政サービスがワンストップでできるとしており「マイナポータル」なるものができるとしていました。7月試行運転と称していますが今日現在動いていないようです。この「マイナポータル」も作動にはインターネットエクスプローラー上でないと動かないようですし、かつカードリーダーも買ってきて、様々な環境整備が必要なようです。少なくともスマホで使えるようにしようという発想は現状全くなさそうに感じます。私はITには疎いほうかもしれませんが、その私から見ても結構すでにしくみ的には化石な感じです。よほどお役所関係と日頃から対応が必要な人以外は縁のなさそうなものです。

マイナンバーが導入されてまだ私は税務調査を受けたお客様はいないので仲間の税理士に状況を聞いてみました。法定調書(給与や家賃などについてその額を税務署に年初に報告する調書:今年からマイナンバーの記載が義務付けられた)などでマイナンバーを全く書かずに提出し、かつ税務調査が入ったという強者税理士もいました。税務調査の際はさすが少しひやひやしたようですが、全くその件は言及がなかったそうで税務署の方も現状はあまり熱が入っていないように見えます(とはいってもちゃんとマイナンバーは記入しましょうね)。

個人的にはマイナンバーなんて面倒だし・・というところはあるのですがやはり社会的インフラとして国民の利便性と行政の効率化を図ってほしいものだと思います。巨額の税金をかけ、自然消滅をして誰も責任も取らず反省も聞かれない住基ネット二の舞にだけはならないことを祈りたいと思います。

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監査改革で欠けているもの

2017.06.28

azusa

最近若手の会計士から将来の不安について悩みを打ち明けられることがしばしばあります。いつでも将来の不安というのはあるものですがその質は変わってきたような気がします。我々のころは将来が全く分からないという漠然とした不安でしたが、今の若手は閉塞感を伴う不安です。私が働いていた1990年代、外資系事務所ということもありましたが見回すときわめて当時の同僚の現在はバラエティに富んでいます。当然そのまま監査法人に残る、または他の監査法人に移って監査の業務を継続しているケースもありますがそれは約2割、会計事務所を開いていわゆる税理士業務を行っているケースが2割、しかしあと6割は投資銀行、ファンド、大学教授、弁護士、様々な経営コンサル、事業会社経営(IT系が多い)および経営陣といった感じです。理由は当時は監査業務中心の経営コンサル会社といった性質があったからかもしれません。仕事自体は基本的に上層部から割り当てらるものですが、やりたいプロジェクトなどは手を挙げた人間が割り当てられる確率は高くなります。別に上層部はスタッフのキャリアパスなどおそらくほとんど考えていなかったと思いますが、皆自分で自分のキャリアパスを考えて仕事をやっていく環境がありました。好意に解釈すると上層部はキャリアパスをスタッフ自身が考える環境を与えてくれていたと言えます。そういった環境だとみな独立意識が強く、別に上司の言うままになることはありません。監査などでも会計処理や監査手法などをめぐって上司と侃々諤々の議論をすることもよくありました。

一方、現在は監査法人は「監査業務」だけを行う専業の企業になりました。「監査」という業務自体は企業経営をする上で役に立つ視点だと私は思いますが、それだけでは企業経営は全くできません。また逆に監査業務は公認会計士の独占業務なので大きな組織は監査法人でないと物理的に制度的に監査はできません。「監査業務専業」自体は顧客企業とのなれ合いを防ぐなど、理由はきちんとあること仕方のないことかもしれません。しかし、上層部の「スタッフのキャリアパスを考えない」という姿勢が環境が変わっても以前と変わらないのはどうなのでしょうか?組織なので上層部に行くほど狭くなっていくピラミッド型なのは仕方がありませんが、ここから漏れていく大多数のスタッフたちの処遇はどのようにしようと考えているのでしょうか?

実はアメリカで先例があります。アメリカは大手監査法人は戦略コンサルテイング会社、投資銀行と並ぶ優秀な大学生に人気の職場です。ただし、アメリカ人に聞くと3年長くて5年以上監査法人にいると(監査しかやっていないので)他の職業では使い物にならなくなるので監査を一生の職業にしたい人間以外の大多数が辞めて、MBAを取得したり様々な職業に転職したりしていきます。確かにアメリカで働いているころ元ビッグ4会計事務所(当時はビッグ6でした)のスタッフは財務・経営企画部門に幹部候補生として多数いました。いわゆるキャリアを切り開く入り口として最適とみられているわけです。一方、日本のいまだに硬直した雇用環境の中でアメリカの制度だけ(監査法人は監査専業)つまみ喰いしてもうまくいきません。アメリカ企業だとビッグ4出身者で事業会社に入ると幹部候補生で日本の会社でいうと課長一歩手前くらいの処遇で入りますが、日本の一般的な企業ですと入社3~5年目の社員と全く一緒(せいぜい資格手当+1~2万くらい)で完全な平社員でしょう。こういったことで全く魅力のあるものではありません。

せめて監査法人はグループの様々なコンサル会社や税務部門などと連携して多様なキャリアパスを用意するくらいのことは考えても良いのではないでしょうか?公認会計士は一般的には監査法人を経ないと資格がほぼ取れないので、監査法人が魅力のある働き場所にならないと公認会計士自体が魅力のある仕事になりません。現状だと他に行くところがないので上層部の顔色をうかがうサラリーマン集団になってしまい、「監査人の独立性」などは絵空事になります。こういったことが若手会計士の閉塞感になっていると思います。特に日本企業においてガバナンスを無力化する大きな要因に「上層部の顔色をうかがうサラリーマン化」が根底にあると思います。この根本的部分にメスを入れずして「監査改革」などを金融庁などが上から押し付けても「書類仕事」が増えるだけだと思うのは私だけでしょうか?

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